ダメラボ

ダメなおっさんが色々と妄想していますよ

生まれて初めて小説で笑った。村上龍の【69 sixty nine】

 

これは楽しい小説である。こんなに楽しい小説を書くことはこの先もうないだろうと思いながら書いた。

 

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私がこの本を最初に読んだのは13の時です。中学の図書室で見つけました

 

当時の私は『純文学を読んでる俺カッコ良いだろ! ドヤ』

をしたいが為に芥川龍之介の『河童』を読みふける痛い少年でした

 

河童て……

 

そんなわけで村上龍という作家を知りませんでした

 

それじゃどうしてこの本を借りて読んだのかというと、69という数字に惹かれたからです

 

……すみません、当時もスケベだったので

 

 

 とにかく笑える

13歳の私はこれを読んでゲラゲラ笑いました

これまでに六冊は買ってます。もっとかも。タイトルにも書いた通り、小説で声を出して笑ったのはこの本が初めて

文字だけで人を笑わせることができる、それを教えてくれた本です。

友人に勧めては戻ってこなくて何度も買い直しました

 

本なんてものは個人の好みがあるから押しつけても迷惑するだけなのですが、それでもこの本が面白くて、知って欲しくて、ついつい色んな人に貸してしまいました

 

笑いのツボは大人になるにつれて変わってきます

今ドリフターズを見ても笑うのはちょっと難しい。良くも悪くも経験がそうさせるのですが、この本はいつ読んでも色あせません

 

不思議ですよね、出てくる固有名詞は古さを感じさせるものばかり、それなのに笑える

たぶん作品全編に漂う楽しげな空気がそうさせるんだと思います

 

歳を食うとどうしても物事を斜に見てしまうけどこの小説は純粋に楽しめます。底抜けの明るさがそういう余地を挟ませません

 

13歳の私は作中に出てくる固有名詞の意味をわかっていませんでした

カミュを知らなければ永田洋子が誰なのかも知らない。それでも笑ってしまう

 

若い人が読んでもきっと楽しめると思います

 

文章は軽妙で読み易いです。本を読むのが苦手な人でもサクサク読めます

 

2004年には映画化されています。主演は妻夫木聡、脚本は宮籐官九郎

 

あらすじ

1969年、ベトナム戦争は泥沼の一途を辿り、衰退していく学生運動が最後にぶち上げた安田講堂占拠によって東大は入試の中止を余儀なくされる。そんな時期に九州の西端、佐世保の高校に通う少年ケンの青春物語

当時の佐世保は学生運動とも無縁な田舎町、でも遠く都会である東京の出来事は逐一耳に入ってくる

『モテたい』それだけをエネルギーにして同級生を巻き込んで学生運動の真似事をしたり、ロックフェスティバルを企画するケン。そんなケンに振り回される友人たち、型に嵌めようとする大人たちが馬鹿馬鹿しいほど楽しく描かれています

 

見所

 ケンはクラスのマドンナ松井和子の気を惹こうと、思いついたら何でも実行しようとします

松井和子が学生運動に理解を示せば、「だったらやるしかない」とばかりに左翼思想にかぶれた友人を巻き込んで高校のバリケード封鎖を計画する

時には嘘をついたり大風呂敷を広げて、友人だって容赦なく利用しちゃう

仲の良い友人はそんなケンの心根をわかっていながらも付き合います。理解していない者は大真面目にケンの言動を信じて付き合ってしまう

 

そんな友人たちのちぐはぐさにケン自身も振り回されてしまいます。誰もが真剣だから真面目に馬鹿やる姿が絶妙な笑いを誘うんですよね

 

友人と馬鹿話をしてる時に誰かが屁をしてもそんなに可笑しくないでしょう。でも絶対に笑っちゃいけない状況、例えば葬式で誰かが屁をしたらどうでしょうか

 

そんな笑いが随所に散りばめられています

 

舞台が佐世保ということもあって登場人物は方言で話します。これが笑いを増幅させるんですよね。文中にも書かれていますが、真面目に体制批判をしても方言だとどこか締まらない

 

作中で強調したい表現を太文字にしているのも特徴的ですね。27年前にこれを見たときは新鮮に感じました。少し前に流行ったテキストサイトはこの手法を使っていましたが、69は1987年の作品なのでこっちが先です

 

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終わりに

 この小説は村上龍さんの半自伝です。最後にそれぞれの登場人物たちのその後が描かれています。楽しくも切ない思い出の詰まった1969年

数行ずつ描かれたそれぞれの人生が作中の輝きをぐっと引き立たせています

 

偶然ですが私は半年前の読売新聞でとある医師の記事を読みました。その医師は作中のヒロインである松井和子の旦那さんでした。もう七十近いおじさんです。

つまりそういうことですね

 

 うーん青春

 

楽しく生きるためにはエネルギーがいる。

戦いである。

私はその戦いを今でも続けている

 

毒もあれば笑いもある。読めば愉快な気分に浸れる

69は私が死ぬまで本棚に残っていることでしょう