月の裏側に秘密基地を作っていたドイツ第4帝国が攻めてくるというとんでもないバカ映画です
パッケージ写真を見るとB級臭がプンプンしますが、わりと作りこまれた映画というのがなんとも……
公開されたのは2012年。賛否両論ありましたが映画はヒット、DVDもやたらと好調な売り上げで、今年の7月に続編が公開されます
続編のタイトルは『アイアン・スカイ/第三帝国の逆襲』
ヒトラーが恐竜に乗ってジークハイルしてる姿がポスターになってます
噂によるとスティーブ・ジョブズも登場するとか
制作者はいったい何を考えているのでしょうか
監督はティモ・ヴォレンソラ。製作費の一部をクラウドファンディングで集めた映画です
クラウドファンディングで製作費を集めたなんて聞くと、貧乏臭い映画を想像するかもしれませんが見事に裏切られます。アイディア勝負のロクでもない映画を想像された方は当たりです
低予算の癖に宇宙空間での艦隊戦映像は滅茶苦茶気合が入ってます。普通にSFしてますよ
作品全体の雰囲気はB級っぽくもあり、そうじゃないようにも見える不思議な映画
やってることは酷いですけど
それでも不思議とたまに観たくなる
細かい部分の演出が妙に凝ってるんですよね。製作側はナチスに対してわかっててふざけてる感じが随所に見られます
第二次世界大戦末期に破れたナチスが自作のUFOで南極から月へ脱出した設定なんて、思わず、フフっと笑ってしまう。ナチスにまつわるトンデモ説をしっかり活かしてます
秘密基地に登場するマッドなサイエンティストはリヒター博士と名乗ってますが、顔はアインシュタイン似。でも言動はどうみても狂人メンゲレです
過激なブラックユーモアと政治風刺がてんこ盛り
作品はふざけてるけど、実はグローバリズムとかジェンダーとかアメリカ第一主義とかを真剣に批判する意図が込められた作品
じゃないです
間違いなくふざけてやってます
不謹慎過ぎて感心します。荒唐無稽な悪ふざけもここまで突き抜けると一見の価値がある
映画に倫理観を求める人は観ないほうがいいです
あらすじ
美人だけどアンポンタンなアメリカ大統領は再選を目指していました。しかし支持率は芳しくありません
彼女は選挙キャンペーンの一環としてアフリカ系アメリカ人でモデルのジェームズ・ワシントンを月へ送り込みます
46年ぶりの月面計画。大統領は黒人を宇宙飛行士として抜擢することで人種差別に対してクリーンなイメージを世間に植えつけようとしたのです
ジェームズは黒人モデルとして有名人なので知名度も抜群
大統領は全米へ向けて大々的に月面プロジェクトを喧伝します。そのスローガンは
BLACK TO THE MOON YES SHE CAN!
(黒人を月へ 彼女ならできる!)
のっけからコレですよ。ヒドイでしょ
しかも大統領はサラ・ペイリンそっくりだし。2008年に悪い意味で有名になったアラスカ州知事さん
ジェームズは無事月面へ降り立ち、『YES SHE CAN』と描かれた垂れ幕を張ることに成功
しかし月面にはナチスの残党が巨大基地を建設して暮らしていたのです
彼らは40年の歳月をかけて大量破壊兵器『神々の黄昏号』をあと一歩という段階まで仕上げていました
たちまちナチス兵に捕らえられたジェームズ。彼は尋問された挙句、喋る英語がおかしいと難癖をつけられ、その原因を皮膚の色だと断定されて
白人へと改造されてしまいます
おまけになぜか宇宙へ持ち込んでいたスマートフォンを奪われてしまう
スマホを見たナチス兵たちはびっくり仰天。初めて見るスマホは余りに進んだ技術の結晶だったからです。見た目はただのiPhoneですが
月面に基地をこさえるナチスをもってしてもスマホは凄い技術だったようです
これさえあれば神々の黄昏号を完璧に制御できる!
ナチ兵はさっそく神々の黄昏号へスマホを接続します
起動した神々の黄昏号に歓喜するナチ兵。しかしスマホのバッテリーが切れてしまい、すぐに停まってしまいます
悔しがる開発チーム
しかし
だったら新品のスマホを地球で調達すればいいじゃない
そんなわけでナチ兵は洗脳した(洗脳された振り)ジェームズを連れて地球へと向うのでした
ロクでもない大統領を巻き込んだナチス騒動はやがて全世界を混乱の渦に叩き込みます
果たして地球はどうなってしまうのか
スポンサーリンク
見どころ
ふざけた映画の癖に月面基地はしっかり作り込まれてます。生意気にスチームパンクっぽいです
長く地球を離れていたのでナチス兵は時代錯誤な思想を信奉しているのですが、それはアメリカ人のジェームズを皮肉ることにも繋がっています
この作品はナチスとアメリカを同列に並べて描くブラックユーモア映画です
製作国はドイツ、フィンランド、オーストラリア
アメリカが絡んでないので悪乗りが凄い
失礼な話ですがこの三ヵ国だとユーモアセンスはなさそうに思えますが、そんなことはありませんでした
私はあらすじでナチス兵をひと括りにして紹介しています。しかし登場人物は多彩です。様々な思惑を持ったドイツ第4帝国の面々がいるので一枚岩じゃありません
それは地球側も同じで日本を含めた世界各国が互いを牽制しあってそれが宇宙戦争にまで発展します
意外に複雑な話なんですけど、映画はそれをわかりやすくまとめていますね
舞台は現代の地球だったはずなのに、いきなり各国が宇宙戦艦を派遣する様子は笑えますよ。しかもアホみたいにカッコ良いヤツ
そこから始まるスターウォーズみたいな艦隊戦。CGは凄くカッチョ良いのですが、それまでのふざけた展開との落差で
なぜか爆笑してしまう
そんな映画
まとめ
頭を空っぽにして観る映画です
作品の性質上、熱狂的なファンがいるのは頷けます
でも決して万人受けする映画じゃない
自分はたまに観たくなります
おしまい