40歳を越えると男性のファッションに求められるのは清潔感と落ち着きです
おっさん向けのファッション雑誌やサイトを見ると↓こういう感じの無難なファッションが取り上げられています(ちょいワル雑誌は除く)
綺麗目カジュアルとでもいうのでしょうか。ブランドだとシップスとかトゥモローランドかな。最近のユニクロもこういう路線ですよね
悪くはないけど自分的にはちょっと物足りなく感じてしまう
こう……なんていうか、躍動感? もっとこうダンサブルでファンキーさというか何というか、そう!
ビビッド感がちょっと足りない気がするね
ヴィヴィッド感が
【vivid】ヴィヴィッドはラテン語の【vividness】(生き生きとしている)が由来になった言葉です
ハイ、リピートアフターみー ヴィヴィッド!!
……すみません、風邪気味で普段にも増して頭が散漫になってます。仕事が休めんからマジできつい……
テンションがおかしいのは自覚してますが今回はこのまま突っ走りますよ~
オサレ戦士ダメラボ
若い頃、お洒落に貪欲でした
学生の分際でローンで服を買ってました。支払いが間に合わず信販会社に呼びつけられること山の如し。でもそこで働く女の子と付き合えたからハッピーマン
服に興味のない人間からすると「アホか」と笑われるでしょうね
私が好んでいたのはいわゆるハイブランドではなく、発表されたばかりのインディーズブランドでした。
生まれたばかりのブランドは勢いがあり、ブランドカラーを積極的に押し出すので尖ったデザインが多いのです
商業ベースに乗ってしまうと、ありきたりになるのでそうなるまでが良い
インディーズといっても決して安くないです。むしろ高い
当然ですが零細ブランドは大量に製造できないので限りなく一品モノに近くなります。ものにもよるけどTシャツで3万円以上とかザラでした
当時はそんなアイテムをポンポン買ってました
今はその十分の一の価格でもウンウン悩む落ちぶれっぷりですが
オサレは中毒性があります。はまると他人と差をつけるために珍しいアイテムや誰も持ってないものが欲しくなります
インディーズブランドは自分にうってつけの存在でした
私のオサレ哲学
奇抜なデザインを取り入れるのはシャツでもパンツでも1点だけです
それ以外のアイテムを無難にまとめることでヴィヴィッド感を過剰に演出しないようするのが俺のジャスティス
どんなにイカれたデザインでも調和を考えて目立たせず、ワンポイントお洒落として着こなせるように考えてました
なんて偉そうに語ってますけど、実際はただの痛い奴でしたけどね
さっきも言いましたが、オサレは突き詰めると加減がわからなくなるんですよ。特に他人との違いにこだわると底なし沼にはまったようにセンスを見失う
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学生時代、行きつけのセレクトショップに行った時の話です
店に入ると、まだ30歳くらいのモヒカン店長が私を見てウへへへと笑ってる
「よう、ヤマグチ~、めちゃくちゃタイミングいいなお前」
店長はそう言うと、透明なビニールに包まれた灰色の布を取り出しました
「なんすか、新商品すか。見たいです」
まだ展示前のアイテムであることは間違いありません。私はワクワクして見守るのでした
「ふふふ、これはな……」
小物を飾るガラスケースの上に灰色の布を広げる店長
「北アイルランドの〇〇カプセル〇〇っていうブランドのTシャツだぜ、向こうのストリートシーンで注目されまくってる今一番イケてるブランドよ!」
そう一気にまくし立てる
私は目を丸くして灰色の布を眺めました
「……こ、これ……Tシャツっすか……」
触れてみると生地はミイラ男が身体に巻く布、つまり包帯みたいな質感です
とても柔らかく頼りない感触。ガーゼを模しているらしい
カラーは灰色に見えたけど真ん中で白と灰色に分れていました。つまりキカイダーみたいなデザイン
「これな、めちゃくちゃ燃えやすい生地なんだぜ! 火をちょっと近づけるとバンバン燃え上がる優れもの。日本じゃまだ誰も使ったことがない生地らしい」
長所っぽく言ってるけどそれはデメリットでは……
一瞬だけ疑問がよぎったけど、『日本では誰も使ったことない生地』という惹句に心を奪われました
しかし改めてシャツを見てイカンイカンと頭を振る
これは絶対に買ってはいけないヤツだ
このアイテムが異様なコンセプトのもとに作られたことは十分理解できました。それだけならばちょっと変わったTシャツで済む話です
問題は外観にあります
キカイダーTシャツは、もはやこれがシャツなのかどうかわからないくらいボロボロに破れていたのです。何故か小さな穴が無数に空いてます
試着しなくてもわかる。これは服の体をなしていないヤツだ
作った奴は適当に作った癖に前衛的とか主張する鼻持ちならないデザイナーに決まってます。俺は絶対に騙されないぜ
店長の商品説明によると、このシャツは特殊な手法で染められた後に、デザイナーの確かな腕前で丁寧に縫製され、仕上げに散弾銃で繰り返し発砲したらしい
お値段は36000円くらいだったと思う
「さ、散弾銃……?」
「クールだろ」
得意げに煙草を吸う店長。そのシャツ燃えやすかったんじゃ……
値段も制作手法もふざけたTシャツ
今の私ならばこんな世紀末カジュアルに大金なんて払うわけがない
でも当時の私は自称最先端をゆく者
燃えやすい布、生産地がマイケルコリンズで有名な北アイルランド、仕上げに散弾銃で撃ち抜くというアバンギャルでアナーキーな発想
それまでゴミにしか見えなかったTシャツがとてもイカした存在に感じられました
シャツを広げ感動にうち震える私
「や、やばい……カッコ良い……」
「やべえよな、こんなヤバイシャツは聞いたことないぜえ~。ヤマグチは外人みたいにスタイルが良いからな、きっと似合う! 北アイルランド人より似合う」
「買うっス、買うしかないっしょ」
まんまとおだてられて購入したのでした
さっそく家に帰ると、このイカれたじゃじゃ馬をどうにか着こなそうと腐心しました
さっきも書いたけど私のオシャレ哲学はどれだけ奇抜なデザインのアイテムであっても調和させること
私は自身が所持する中で最も地味な服を使ってこの禍々しいTシャツのオーラを封殺しなければなりません
まあ無理でしたね。インパクトが強すぎですよ。幸いにして乳首が見えることはなかったけど穴だらけなので地肌が透けて肌色成分が多すぎる
『マッドマックス 怒りのデスロード』感が半端ない
鏡の前でポージングをキメていると母ちゃんと妹が「キリストかよ」と笑い転げていたのは忘れません
それでも私はまだ熱に浮かされていたので(大金を払ったので失敗したと認めたくない)堂々とこのシャツを着て大学に行きました
出会う友人やクラスメートに
「このシャツ散弾銃で撃ったの。すごいでしょ」
と自慢しまくり
裏を返すとそう説明をしなければ、ボロを纏った狂人と思われるからです。あるいはヒメカツオブシ虫の大群に襲われたとか
そんなわけで私はいまだにコーディネートを考える時はワンポイント外す癖があります
さり気なく目立つことを考えちゃう
昔買った服でいまだに捨てられないものがあります
このスカジャンです。これはさっきのセレクトショップで買ったものです。たしか7万円くらいだったと思う
スカジャンといえば昔はヤンキーの定番ファッション
戦後に進駐軍として日本にやって来たアメリカ人が和柄の龍や虎を気に入り、自分たちの着ていたジャケットに刺繍を入れたのが始まりです
だからスカジャンといえば↓のような和柄が定番
引用:Wikipedia
しかし、私のオサレスカジャンは一味違う
見えにくいかもしれませんが背中に描かれているのはガネーシャです。ヒンドゥー教の神様よ。和テイストが中心のスカジャンでこれは珍しい
写真は光のせいで色が上手く表現されてないけど落ち着いた高級感のあるエンジ色です。モード感が漂ってる。せっかくのガネーシャも同色で刺繍されているのでほとんど見えない
いかに目立たせるか。それがスカジャンの特徴でもあるのに、逆の発想で作られています
だからこそ大いに気に入りました。見えない所にこだわる江戸っ子みたいなファッション。その辺の雑兵どもが金太郎飴みたいな定番スカジャンを着てる中、私だけガネーシャな男
ずっと着たかったけど、さすがに30を過ぎたあたりで難しくなったのですよ。丁寧に扱っていたので今でも十分に着られます
ただし、
いかに落ち着いたデザインとはいえ、スカジャンはスカジャン。やんちゃ感がどうしても拭えない
先日試しに着てみたら友人の息子に
おじさんロックンロールだね
と言われてしまいました。彼には私が高橋ジョージにでも見えたのかな。そういうキャラに見られたことが凄くイヤ。もっと洗練された大人としてみて欲しいぜ
でもスカジャンの印象がそうなのでしょうね、特におっさんが着たら。それともモデルの問題?
このスカジャンをどうにかしてお洒落に着こなしたいんですけどね~
スウェットパンツに合わせたらどうだろう?
若作りしすぎかなあ
おしまい