昨日は常連のお客さんがシュプリームのパーカーを着てました。赤いボックスロゴのやつ
私よりも年上です。50前後くらいでしょうか
なかなか若い趣味してるなと思い、おべっかを使って褒め称えます
「吉田さんの着てるパーカーってシュプリームですよね、お洒落じゃないですか、それってアメリカのブランドでしたっけ」
自分の中ではエイプやシュプリーム、ステューシーと言えば90年代~00年代前半にちょっとイキった若者がこぞって着てるブランドってイメージです。いわゆるザ・ストリートブランドって感じ。裏原系なんて言葉がありましたね
そいういえばNIGOとか藤原ヒロシってどうしてるんだろう。エイプってたしか潰れましたよね
どのブランドも妙に高かった印象があります。パーカーとか2万くらいしてた気が……
「おっ、なに店長。ファッションに詳しいの?」
「詳しくはないですけどシュプリームは知ってますよ」
「へへへ、これを手に入れるのにすげえ苦労したのよ」
「苦労って……ただのパーカーでしょ。zozoとかで買ったんじゃないんですか?」
しまった、つい本音が。お客さん目を剥いてる
「た、たかがパーカーってアンタ……これが幾らするか知ってる?」
「え? 2万くらい……かな」
……
はあ、パーカーが10万越え!? 嘘でしょ
シュプリームってすげえ人気らしい
驚く私にお客さんが色々と教えてくれました
パーカーやTシャツは直営店で並ばないと手に入らないとか、何某というタレントが着てるとかルイヴィトンとコラボアイテムを作ったとか偽物と本物のタグの違いとか
数年前から品薄状態が続いて値段が跳ね上がっているらしい。それも異常なほど
どうしても欲しい人はヤフオクとかの転売屋から購入する
お客さんが着てるパーカーの定価は2万程度だそうです
つまり5倍以上の高値ってことか……信じられん
ずるい、ずるいよシュプリーム
私なんて日韓サッカーワールドカップのアディダスとコカ・コーラのコラボスニーカーを今でも未使用で持ってるのにちっとも値上がりしません
当時、コカ・コーラがシールを集めて優勝国を当てると抽選でアディダス限定モデルをプレゼントするというイベントをやってたのです
私はコーラを買うたびにシールを集めて、見事に優勝国のブラジルを予想しゲット。懸賞なんて滅多に当たるものじゃないので小躍りして喜びましたよ
いずれプレミアがつくはず。共催とはいえ日本開催のワールドカップです。滅多にあるもんじゃありません
価値が上がればヤフオクに出品するつもりでした
ところがワールドカップが終わるとヤフオクには限定モデルが多数出品されました
だいたい一万円前後で落札されてました
それから17年、時を止めたのかと錯覚するほど当時から価格が変わってませんね。いまだにヤフオクでは一万円前後です
スニーカーなんて消耗品でしょ
まともな市場原理が働けば、普通は値上がりしませんかね
いったいコカ・コーラはどれだけ限定モデルをばら撒いたのでしょうか
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ブランド隆盛今昔
それにしてもシュプリーム狂騒曲がいつから始まってるのか知りませんが、これってアバクロの時と似てますね
アバクロもバブルってた時期があります。ただのカジュアルブランドで質も良くないのにべらぼうに高騰しました
東京の直営店にはマッチョな外人モデルを店員として雇い、派手なプロモーションが話題になりました
たしかダウンタウンの浜ちゃんがアメカジ好きでよく着てたブランドです。それもあってか雑誌等でも頻繁に取り上げられてた
実は私、このブランドとはちょっとだけ付き合いがあります
大学を卒業して一年ほどフリーターをしてまして
バイトはテニスコーチと居酒屋店員とテキ屋の掛け持ち
テキ屋の仕事はご存じ屋台です。トラックに機材を積んで祭りやイベントへ出かけます。お面やアメリカンドッグ、焼きそば、なんでもやらされました
他のテキ屋はどうだか知りませんが、私がいた組織はおっかない人たちの集団でした
でも今ほど警察の締め付けが厳しくない時代なのでお祭りには普通に参加できます
そんなテキ屋な私ですが仕事は屋台だけじゃありません。たまに変わった任務を仰せつかることがありました
鹿児島や熊本の夜のアケード街でダンシング人形を販売するとか
これ意味がわからないかもしれませんが、ようするにダンシング人形を人込みの中で歩かせて「キャーかわいい!」とか注目を浴びたら「お姉さんひとつ買わない?」って営業するやつ
夜の繁華街は酔っぱらってる人が多いので高価な人形でもわりと買ってくれます
狙い目は飲み屋のお姉さんと同伴してる男ですね。お姉さんが興味を示すと男は良い顔したいので気前よくお金出してくれる
商品を並べて商売してるわけじゃないので警察の目につきにくいというわけです
でもしばらくすると警察も把握したのか巡回が厳しくなってしまいましたが
それとアバクロブームの頃は福岡は北九州の黒崎にある倉庫へ何度か行きました。仕事内容はトラックを使った荷物運び
倉庫には大量の段ボールに詰まったアバクロの衣類が。その隣にはKENZOとかミラショーンのジーンズが大量に積まれてました。
倉庫で受け渡しに立ち会うのはお洒落とは縁のなさそうなおじさん2人
2人はいつもレーヨン生地の2タック紫ズボンをはいてました。
「おお、すげえ! これってアバクロでしょ!?」
初めてアバクロの服を大量に見た時はお宝を見つけた気分でした。すでにプレミア価格になっていたので
テンションウキウキで箱の中の商品を覗くと、かすれたオレンジ色のスウェットパンツ。太腿にワンポイントのワッペンが貼り付けてあるやつです
おじさんの説明によればベトナムの工場から仕入れたアバクロのB級品。規格から外れたアイテムなのでタグが半分切れているとのこと
……あれ!?
スウェットパンツを広げて眺めると、違和感が。
縫製が荒い。ワッペンは今にも取れそう。何より生地が異様に薄い
アバクロはもともと古着っぽいデザインではありますが……げ、ちょっと引っ張ったら伸びてヨレヨレ
それに段ボールに記載された送付元がインドになってる。ベトナムのはずでは
「これ……偽物じゃ――」
「B級品だ」
「そ、そうでしたね。失礼しました」
「黙って働け」
「イエッさー」
そう、これは本物。その辺の小学生が家庭科で作ったレベルに見えますが、アバクロのアバンギャルドなセンスゆえなのでしょう。そう思い込むことにしました
無駄な想像力はこの仕事に不要です。黙って仕事するのみ
ぶっちゃけ本物もたいして作りが良くないので「B級品ならこの程度かな」と迷ったのは事実です
B級品なんて公式には存在しないけどね
後にアバクロは売り上げが低迷して直営店は撤退しました。そらそうですよ。何を勘違いしたのか正規品の価格をかなり吊り上げてましたからね。一過性のブームを自らの価値だと錯覚してしまったのでしょう
日本へ進出して撤退するまでが異様に早かった気がします。東京はまだあるのかな
そういえばシュプリームも大量に偽物が出回ってますね
同じ道を歩まないように陰ながら応援しています
おわり