巨人の阿部真之介が引退しましたね。40歳でした
強打の捕手として知られ、巨人のマスクを長く被った選手です
中央大学を卒業して巨人へ入団したのは2000年
デビューイヤーから村田真一の後継者として鍛えられました。最初の頃は短気なガルベスがいつも阿部にキレてたのを覚えてます。その後の活躍は誰もが知るところ。一時期ホームランを結構打ってる印象がありましたけど本塁打王は獲ってないんですね、意外です
19年間お疲れ様でした
時の流れは平等に訪れて欲しくない
さきほどスマホを弄っていたらグーグルディスカバリーにインリン様のグラビアが掲載されていました。久しぶりに見るインリン・オブ・ジョイトイ、相変わらずM字開脚は健在です、Tバックのお尻はふしだらです
現在、3人の子を持つエロテロリストは43歳の人妻になっていました
……
はえ、みんな歳をとったよね
私は阿部と同い歳です。2人の若い時代を知っているので余計にそう思っちゃう。彼らが歳をとったということは自分もそういうこと
でもさー、勝手な話だけど自分が老けたことは認めたくないんですよ
よく私は自分のことをおっさんだと吐いてますけど、ぶっちゃけそんなことこれっぽちも思ってません
嘘ついてすみません。実はネバーな王国に生きる永遠の30歳です。肉体年齢なんて測定したら16歳でしたよ、さすがに壊れてんじゃないかと思いましたけど
そんなわけで店に同級生が遊びに来ると自分の戸籍上の歳を思い知らされるので非常に迷惑だったりします
私の店は母校である小学校と中学校の傍にあります。古い町なので地元に残って就職する同級生がそれなりにいます。頭の良い奴は東京とか大都会へ出るので残っているのは私と同じアンポンタンが多い
そういう連中がお気軽に店へやって来るのです
彼らの同い歳とは思えないおっさん顔を見るたび、加齢渦巻く深淵に引きずり込まれそうでうんざりします
俺はお前らみたいにならないからな!
そう心の中で誓う
腹が立つことに彼らは彼らで自分がまだ若いと思ってる節がある。いい年してモヒカンとかパイナップルみたいな髪型の奴もいますからね
本当に困った連中ですよ
余談ですが世間には我々みたいな40代が増えているらしい。自分を正しく評価できない子供おじさん。まだまだ若い子と付き合えるぜ、と勘違いするおじさん
40男が陥るモテ錯覚「もしかして俺、イケてる?」と思い込む人たち(大宮 冬洋) | 現代ビジネス | 講談社(1/4)
閑話休題
キッスの味
昨日、同級生が店に来ました
加藤君(仮名)です。彼は中学時代の同級生です。同じテニス部に所属してました
いつものごとく自分の分しか買ってこないコーラをズズズと一口飲んで彼は言いました
「先週さ、Fさんとキスしたんだけど……」
のっけから気持ちの悪いことこの上ない。誰がおっさんのキッスを報告しろと言ったんでしょうか。そもそも私はFさんが誰なのか知らんし
Fさんの素性を尋ねると高校時代のクラスメートらしい。当時の加藤君はテニス部。Fさんはバレー部。私は加藤君と高校が違います
加藤君はバツイチです。離婚して5年が経ちます。そんな加藤君に心優しい高校時代の友人が紹介したのがFさんでした。Fさんは独身
加藤君とFさんは20年ぶりの再会でした。Fさんは礼儀正しく清潔感のある女性です
2人とも似たような趣味を持っていたこともあり意気投合、デートを重ねること数回目にしてキッスをした。それが先週の話
「キスをしようと顔を近づけるじゃん、……その時に口が臭かったんだよね」
暗い顔でつぶやく加藤君
「ニンニクを食べたとか? それとも歯槽膿漏?」
「いや、そういうのじゃなくて……なんつうか……俺のばあちゃんと同じ臭いがした……」
加藤君の婆ちゃんとはトヨさんです。私は彼の実家に入り浸っていたのでよく知ってます。小柄で優しいい婆ちゃん
それはいいとして加藤君の話を詳しく聞くと、Fさんの口は顔を背けたくなるほどの悪臭ではないらしい
しかしチュッチュするたび、仄かに香るのは85歳にしていまだみかん畑で頑張る婆ちゃんのお口
「婆ちゃん……」
加藤君はうわ言のように呟く
哀愁が漂ってて面白いのですが、本気で凹んでるみたいなので弄るのはやめときます
「たまたま彼女の体調が悪かったという可能性は?」
「遠まわしに聞いてみたけど特に悪くないってさ。何回もキスしたけど毎回臭うからな。あれはたぶん彼女固有の臭いだ」
「……つまり」
「そう、あれはババア臭だ」
ババア臭、静かな店内で重苦しくリフレインする不穏な単語
あまり聞きたくない言葉です
加齢が進むと消化器の働きが悪くなります。歯周病にもなりやすい。唾液の分泌も少なくなります。女性はホルモンの減少が唾液腺に影響を与えることもあるでしょう。また歯の詰め物が傷んで臭うこともある
それら様々な要因が合わさることで年寄り独特の口臭が生まれるのです
自分たちの同級生からババア臭が……
言い換えると我々がジジイ臭を発してもおかしくない年頃ということ
「「……」」
その事実は我々を暗い気分にさせました
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ダメな大人
若い人からすれば「40歳なんてジジババなんだから臭くて当然」と思うかもしれません
しかし我々は現実を直視したくない。一生曇った眼鏡をかけていたい
頭がおかしいと思われるかもしれませんが
我々は自分たちを20代でも通用するんじゃないかと思ってたりします
さっき永遠の30歳とか言いましたけど、あれ嘘です。逆サバ読みました
これってあるあるだと思うけど
子供の頃から付き合いのある友人に囲まれていると外見の印象が20歳くらいで固定されちゃうんですよ。この錯覚は年をとってもなかなか解けません
不思議だけどお互いにおっさんだとわかってるにも関わらず正しく相手を認識できない
だからお互いに「おっさんになったな」とか笑って言い合ってますけど誰も本気で思ってません
幸か不幸か我々は昔なじみの友人と頻繁に会える環境です。古い付き合いだと保育園や幼稚園から一緒という友人もいます
そういう連中と普段から顔を合わせていると自分たちはまだイケてる、若いんだと思い込んでしまう
DQNな友人は既に20歳の子供がいるのですが、それでもまだ若いと頑迷に信じてます。私だってソイツの20歳の倅を見て「お前なんかにぜってー負けねえからな」とかマジで対抗心をメラメラ燃やしてます
ちなみにFPSゲームは私の方が強いです。フフン
しかし、ふとたまに魔法が解ける瞬間がある。それはちょっとしたきっかけです。皆で集まって居酒屋で飲んでる時に照明の当たり具合で誰かの顔がたまたま詳細に見える。白髪が増えてたり、張りを失った頬の肉が下がっていることに気づく。同級生がそうだということはもしかして自分も……
そんな時に現実を閉じ込めた蓋がパカリと開く
大急ぎで蓋をします。見なかったことにします。強引に錯覚だと言い張る
しかし
同級生のお口が婆ちゃん臭い、 それは我々の幻想に亀裂を入れるに十分な衝撃でした
老いは確実に迫っている……
もしかしたら私も実は臭くて、キャバクラに行った時は女の子たちが我慢してくれてるとか。バックヤードで「あのおっさんマジで最悪!生ごみみたいな臭いがするよね」とか言われてたらどうしよう
私は恐ろしくなったので加藤君に自分の口臭を確かめてくれと言いました
彼は嫌な顔をしましたが「自分の口臭も嗅いでくれるなら」と生意気にも交換条件を出してきたので渋々承諾しました
「お互いに遠慮せず正直に答えること、嘘はなしね」
くどいほど念を押してお互いにふーふーと吐息を吐きかけ合いました
「……コーラの匂いはするけど……たぶん大丈夫?」
「いや、なんで疑問形なのよ、も一回吐くから嗅いでみ」
「えー、くんくん」
やけに必死な加藤君に肩を掴まれフーフーされる
思い返してみるとすげー気持ち悪い光景だな
とりあえずお互いの口が臭くないことがわかり、ほっとしました
大人のお付き合い
「それでFさんのお口問題は?」
「……交際は続ける。良い人だからな。でもタイミングを見て彼女には話すよ、対策がなにかあるかもしれんし」
「我慢して付き合い続けるよりはいいかもね」
「まだ若いからな、健康上の理由ならどうにかなるかも。ダメだったらその時考えるわ。しばらくはキスするたびに婆ちゃんの顔がチラつくけど我慢だな」
そう言って加藤君は帰っていきました。わりと真面目にFさんとのことを考えているようです
そこでふと気づきます
そうか、人はこうやって少しずつ現実を受け入れて大人になっていくのか
これがフロイトの提唱する精神的な去勢というやつかもしれない
またひとつ賢くなってしまった……
まあいいや、頑張れよ加藤君!
おしまい