ブラック企業と一口にいっても様々です
残業代や手当を払わない会社、劣悪な労働環境で当たり前にパワハラが横行する会社。鉄拳制裁飛び交うバイオレンスな会社
当たり前ですが誰だってそんな会社で働きたくはないでしょう
とはいえ世間の評価に振り回されず、自分にとって良い環境を見つけるのが一番です
もしかしたら俺はブラックな企業の方が合うかも
そんな奇特な人がいるかもしれません
そんなわけで今日はブラック企業の紹介をします
魚介卸売会社について簡単に紹介します
今日話すのはあくまで一例です。参考程度にとどめてください
待遇
水産業関連の会社はどこも慢性的な人不足です。大手は難しいですが中小であれば現役の犯罪者でない限り採用してくれます
大抵の会社は試用期間が3〜6ヶ月ほどあります。その間は時給制です。時給は一概には言えませんが、最低賃金の1割増し程度かな
試用期間でバックレる人は多いです。
社員の給料は新人でも総支給で25万は超える所が多い。若者もおっさんも関係なくです
ただし基本給は低く抑えられているので、手当で稼ぐことになります
早朝出勤、深夜出勤、なんでもあり。勤務時間は不規則です
ちゃんとした会社であれば業務内容は固定です。しかしちゃんとしてない会社が多いので配達から魚の加工までなんでもやらされます
人の多い繁華街で配達する時は色んな業界人とトラブる可能性があります。「全員ぶっ〇してやる」と気合を入れて配達しましょう
加工場では機械を操作します。集中してないと不注意でひどい怪我を負うことがあります。
しかしせっかく集中しているのに「仕事が遅せえんだよ!」と急かすチンピラが口を出します。チンピラはせっかちなのです
そんな時は相手が先輩社員でも「邪魔すんな! ぶっ〇すぞ」と威嚇しましょう
人間関係はスパイシーになりますが、急かされて指が亡くなるよりマシです
職場環境
仕事は過酷、従業員の質はよくありません。しかし残業代はきちんと支給する会社がほとんど。ケチると簡単に離職されますからね
辞めたと思った人が隣の会社で働いてた、なんてザラです
社長は昔カタギが多く、多少無理してもボーナスを支給してくれる粋な一面があります
昔は学歴がなくても高給が貰える職種のひとつでした。しかし現在は漁獲量の減少、食文化の変化により以前ほど稼げません
それでもまだそれなりには貰えるので、癖の強いキャラが仕事を求めて集まります。もちろん普通の人もいますよ
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魚市場へGO
先日のお盆休みの話です
私はお客さんへ届け物があったので魚市場に行きました
届け物というのは腕時計です。お客さんが店に忘れたのです
普段だと忘れ物は次回の来店まで預かっておくのですが、時間があったので届けることにしました
市場に到着したのは昼前
競りはすでに終わってます。しかし市場の端には卸売り業者の建物がたくさん建っていて人や車の出入りが激しい
さすがにシャバは盆休みなので活況がありますね~
なぜ盆休みに賑わっているのかというと、この時期は飲食店が繁盛するからです。水産業者にとっては一年の内で年末の次に忙しい時期。つまり稼ぎ時
どこの会社も魚を配達してはすぐ戻ってきてまた配達、その繰り返し
魚市場はかなり広いので慣れていないと迷います。知らずに侵入禁止エリアに入ると柄の悪いおっさんたちに容赦なくキレられます
昔に比べればマシになりましたが、それでもDQN率は高いですね。特にこの時期は忙しくて寝てない人が多いので気が立ってます
出入りする車は乱暴運転が多いので注意が必要です
ちなみに私は昔から何度も来てるので無問題
お客さんの勤めている会社は西側にある魚介卸売り会社です
豆知識ですが一般人がこういう場所で魚を買ってもあまり安くなりません。小売を通さないので安く買えそうですが、個人客は金にならないので相手にされずふっかけられるのです
買うなら関係者を通した方がお得です
会社の雰囲気
「悪いね、わざわざ来てもらって」
会社に着くとお客さんが外で待ってました。52歳のおっちゃん、Cさんです。この会社では偉い人です
「構いませんよ。時間があったので」
私が腕時計を渡すとCさんは
「サンキュー、よかったら弁当を用意したから食べていってくれ」
と言いました
タダ飯は大好きなので感謝していただきましょう
ちなみに我々が会話してる最中にも怒鳴り声があっちこっちから聞こえます
「さっさと終わらせろやあ!!」
二十歳そこそこのやんちゃな若者が積み込み作業の遅いおじさんを怒鳴りつけていました。加工場では作業員のおっさんが魚の神経を抜くエアガンを振り回して誰かにキレてます。トラックのドライバーに蹴られて転ぶ作業員もいる
沸点の低い人が多いのです
こういう職場では舐められるとイジメられます。例え上司でも殴られたら殴り返す強気の心が必要です
大丈夫、それでも首にはなりません
この業界は前科者でも差別せずに受入れてくれるほど懐が深いのです。殴り合いなどとるに足りません。勤務時の服装や髪型が自由という利点もあります
興味のある人はどうぞ
いつでも人材募集中ですよ
でも大きな会社は身なりや犯罪歴に厳しいのでおすすめしません
会社の中の様子
私は案内されて事務所に入りました
「はあ、だから言ってるでしょ! 何度も言わせないでよ!!」
事務所でお茶を貰って弁当を食べてました。生姜焼き弁当です。美味しいです
さっきから事務員のおばさんが電話で誰かにキレてます。私が近くにいるのに遠慮する様子がありません
人は環境に染まるもの。事務員までこの有様ですよ
この会社は客に対して超横柄なのです
文句があるなら売ってやらんぞ、と言わんばかり。もちろん大口顧客にはそれなりの態度で接しますが、個人の飲食店相手だと鼻くそ以下に扱います
もし個人客が電話で苦情を言えば(例えば頼んだ魚の身が痩せてるとか)
「じゃあ他所で買え」
そう言って電話をガチャ切り
マジですからね。あり得ないでしょ。「ごめん」を決して言いません
そこそこのシェアを握ってる老舗ということもあり、悪い意味でプライドが高いのです
この会社ほど極端でなくても魚関連の業者は独特の価値観で動いています
一般的な社会常識が通用しないことも多々あります
労基とか言ったら鼻で笑われますよ
なんでそんな事を知ってるのかというと学生時代に人に頼まれてこの会社でバイトをしていた時期があるからです。それ以降もたまに手伝ってました。流石に今はしてませんが
ちなみに私は心優しいので怒鳴ったり誰かを虐げたりはしません。常にヘコヘコしてました
しかしこの会社は社員もバイトも関係なくコキ使うので仕事は超大変でした
久しぶりに会社に顔を出したのですが色々と設備が新しくなってましたね。加工場の手洗い場が全自働の最新式になってる。それに社内のあちこちに監視カメラが設置されてます
Cさんとの世間話で知ったのですがHACCP(ハサップ)を導入したらしい
ハサップとはアメリカ生まれのよくわからない制度?
食品を安全に製造するための管理手法を定めたものだそうです。手洗い場が新しくなったり加工場や生けすに監視カメラを設置しているのはそのため
昔はチンピラ社員が煙草を咥えて魚を捌いていたのですが、時代はすっかり変わってしまったようです。
そんなことを言ってる自分もマイわさびを持ち込んで切った魚を勝手に食べるという無法を犯してましたが
新鮮な魚は本当に美味しいですよ
加工場や生けすの様子
事務所のデスクに置かれたPC画面では監視カメラの映像がながれていました。加工場の様子が見えます
トラックから降ろされた活魚は本来だったらまず生けすに入れるのですが、そんな暇はないのでしょう次々に捌かれています
みんな殺気立ってますね。声は聞こえないけど怒鳴ってるのがわかる。あ、まだ誰かが蹴ってる
映像が切り替わり、水色の生けすの上で作業してるスタッフが映し出されました
水を満たされた生けすは幅が7メートル×3メートル、深さが1.5メートルほどあります。そんな巨大な生けすが10ほどくっついて並んでいます
生けすの中はタイやカンパチです
10人のスタッフが網を使って魚をすくっていました
彼らは生けすの縁を歩いて作業してます
みんな疲れてるのか寝てないのかフラフラしてる。足場の幅は50センチくらいあるけど大丈夫かな……
「Cさん、この時期はやっぱり寝てないんですか」
「いいや、ちゃんと30分は寝てる」
「……」
昔も繁忙期はこんなものでした
普段は月に10日程度は休みがあります。しかし忙しかったり人が不足してると4日しかとれないこともザラ
私が監視カメラを眺めてる間に、寝ぼけて生けすに落ちた人が3人いました。みんな水の上を歩くように落ちてました。慌てる様子もなく綺麗な姿勢で吸い込まれていくのでホラーですよ
私はゲラゲラ笑ってましたけど
ハサップが台無しですね。むしろそんなの無いほうが証拠が残らないのでいい気がします
怖いおじさん神崎さん
そんな感じでバイオレンスブラック企業の内情を眺めていたら、
「よお」
1人のおじさんが事務所に入ってきました。ジャージ姿の中肉中背です。後ろから若い男も
「だからあ……ッ!?」
それまで電話口で喚いていた事務員が慌てて声を小さくしました
「神崎さん!」
Cさんは急いで立ち上がるとおじさんの所へ
「これは差し入れだ。みんなで食ってくれ」
鷹揚にそう言うと、おじさんはCさんへ大きな箱を渡しました。地元の製菓メーカーのお菓子ですね
お菓子箱は大量にあるようで若い男が次々に運び込んでます
「すみません、いつも気をつこうてもらって……」
Cさんはぺこぺこ頭を下げてます
「社長に会いに来たついでだから気にすんな」
このおじさんは神崎さん(絶対仮名)といってテキ屋とか色々な組織の元締めです。事業家でもあります
風の噂では神戸で任侠道に邁進する組織の3次団体の代表のような気がする今日この頃
どうしてそんなことを知っているのかというと、私は学生時代にこの人の下でテキ屋とか諸々をしてた時期があるからです。2年間くらいかな
昔この会社でバイトをしていたのは神崎さんに頼まれたからです。神崎さんはここの社長と知り合いでよく顔を出してました
なんとなく今日も会うだろうなと思ってました
そんなわけで私も挨拶します。世話になったというよりこき使われた思い出しかありませんが
誤解がないように言っておきますが私は構成員ではありません
ちょっと昔話
20年前の学生時、私は冬休みのバイトを探していました。
「なんか楽な儲け話はねえかな」とか舐めたことを考えながらアルバイト情報誌をめくっていると
日給3万円! 玩具やお菓子の販売員大募集! 出会いが沢山あるから楽しいよ! 彼女もできるかも
という甘い言葉につられてノコノコと騙されたのです。
今考えるとバカだと思います。当時の私はこの求人を見てデパートの初売りイベントのバイトだと思っていたのです
そんなバイトで日給3万円も貰えるわけがない
面接会場は郊外の駅の駐車場に止めらたセルシオの車内ですよ。面接官はどうみても堅気じゃないスキンヘッドのおっさん。履歴書を渡したのにロクに見もせずに
「採用だ。〇〇神社に17時集合、バックレるなよ」
断れるわけがない
しかもですよ日給っていえば普通は朝から夕方までの8時間労働をイメージしますよね。私は文字通り丸一日、いえ、正確には30時間ぶっ通しでテキ屋でお面を売ってましたからね。
大晦日の話ですけど、真冬に火の気もない場所でお面売りですよ。凍え死ぬかと思いました
せめてアメリカンドックの担当にして欲しかったです
だいたい混じりっ気なしの30時間労働とか聞いたことないですよ。トイレ以外休憩なしなんですよ。ストーブくらい支給するのが人情でしょうよ
本当に寒さで眠くなるというヤバい状態を味わい、さすがにカンカンに頭に来たのでボスである神崎さんに抗議しにいったら、次の日からはアメリカンドックを神崎さんの姪っ子と一緒に売ることになりました
どうして姪っ子と一緒なのかというと、私が「出会いがないじゃん」と怒ったらです
……よく考えたら神崎さん良い人かも
労働時間も10時間に短縮すると約束してくれました。短縮ってそれが普通なんですけどね
その結果神崎さんの姪っ子と仲良くなって、テキ屋も続けることになって、彼女と付き合うことになったので、海外に行くまでの2年間はテキ屋を頑張るのでした
まとめ
最後は自分の話になってしまいましたが以上でブラック企業の紹介を終わります
そうそう、この会社でバイトしてる時に「自分を変えたい」みたいな意識高そうな目的で来た人が数人いました
まるでソマリアに来たみたいなノリで、我々チームDQNの職場を見てる様子でした
大抵は若者です
気持ちはわかります。荒んだ職場なので心を鍛えられると思ったのでしょう
みんな長続きしませんでした。三日ももたなかったかな。辛そうだったのでそれで良かったと思います
克己的なものを求めるならもっとマシな業界があります。気の弱い人が無理して働いてもトラウマが深くなるだけです
そういう目的で働くのはお薦めしません
おしまい