私の父の実家は福岡の某都市にあります。ヤクザが多いことで有名な都市です
巷を騒がせる北九州じゃありません。どちらかというと青春の門的な都市です。炭鉱の街
実家の近所には銭湯があって小さな頃はよくそこへ通ってました。男も女も刺青をいれた客が多かったのでそれが普通なんだと思ってました
福岡には指定暴力団が五つあります
- 北九州の工藤会
- 久留米の道仁会
- 田川の太州会
- 博多の福博会
- 大牟田の浪川睦会(旧名 九州誠道会)たぶん旧名の方が有名だと思う
指定暴力団の数は全国屈指です。なので
キセキの世代と言われています
特に有名なのは北九州の工藤会でしょうか
スジ者だけでなく、一般市民から警察まで分け隔てなく襲うという狂犬ぶりは他を圧倒してます
捜査に関わった元警察官が銃撃されたり、暴力団追放運動のメンバーが経営する高級クラブが襲われています。このクラブは手りゅう弾を投げ込まれ、多数の従業員が重軽傷を負いました。もう滅茶苦茶
当然ですが福岡県警はマジ切れ。政府や全国の警察と協力して『頂上作戦』を開始
現在、工藤会は組員約300人(準構成員は別)のうち半数が逮捕、勾留中で弱体化が進んでいます
2014年に最高幹部を逮捕したことで始まった頂上作戦は今月の11日で5年を迎えました。10月には野村悟被告(工藤会トップ)の公判が福岡地裁で始まります
▲の画像は福岡県警のサイトです。ネタみたいな内容ですが本物です
暴力団の抗争に手りゅう弾が使われる事件が多発したのでこのような情報が掲載されました
数年前には北九州の住宅街で拳銃と実弾、そして装弾済みの対戦車用ロケットランチャーが見つかっています
いったい福岡は何処を目指しているのでしょうか
前置きが長くなりました。今日は手りゅう弾について書いてみます
カンボジア
カンボジアといえばアンコールワットなどの巨大遺跡群、クレイジーな独裁者ポル・ポトの大虐殺跡地であるキリングフィールドが有名です
そしてもう一つ人気スポットがあります
それはガンシューティングです
ある程度大きな都市には大小さまざまな射撃場があります。コンクリートでちゃんと囲われた施設もあれば、原っぱに銃器を並べただけの店?もある
他国に比べて豊富な銃器が格安で楽しめるということで、旅行者の定番アクティビティになっていました
ハンドガンはもちろん自動小銃や手りゅう弾、ロケットランチャーまで扱えます。好きな人はそれだけのためにカンボジアを訪れるほどです
調べてみたら現在の相場はハンドガンや自動小銃、手りゅう弾が40~50ドル。ロケットランチャーが300~400ドル
昔に比べてかなり高騰してますね。観光客が増えているからでしょうか
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18年前
私はプノンペンにいました。プノンペンはカンボジアの首都です
当時はまだ街の建物がどれも古ぼけていて、銃弾の跡が生々しく残っていました
内戦の爪痕が残る土埃にまみれた都市。それがプノンペンの第一印象です
でも活気はありましたよ。騒然としていたともいえます
道を行き交う大量のバイク、路上で椰子酒やよくわらない食い物を売る人々。マーケットに行くと盗品やコピーしたCD、DVD、果ては拳銃までこっそり売ってました
みんな笑顔でした
これまでの旅行で気づいたのですが治安の悪い都市ほど住民の笑顔率が高い気がします
街を巡回する警官は制服を着たままドラッグを売りつけてきます。断れば「だったら警官バッジを買わないか」とか狂ったことを言ってきます。15ドルくらいだったかな
都市部をちょっと離れると同宿の外国人が違法に入手した銃で遊んでいました。クスリでボケた頭で川や森に向かって乱射する姿は本官さんみたいです。仲間みんなで武器を持ってワイワイしてます
警官の汚職、銃器やドラッグの密売、未成年の違法売春、パスポートや国際免許証の偽造屋
プノンペンは表側はそうでもないけど、裏側を覗くと笑うくらいの無法地帯が広がっていました、まさにフリーダム
そんな街でしたが、私は滞在6日目にして浮かれてました
「なンだよ、この街はよ~法はねェんかよ」
などと池上遼一風に呟くほど
例えるなら沖縄に憧れる本土の若者が、移住して3日目には地元人きどりで近所の老人を『オジー』とか呼ぶ心境に似てます
プノンペンに滞在したことで自分まで悪(ワル)になった気分で調子こいてました
当時は頭をドレッドにしてました。刺青も本気で入れようと考えてました。高校デビューならぬプノンペンデビューとでもいいましょうか
遅れてやってきた思春期ほどタチの悪いものはありません
気分はクライングフリーマン、あるいはサンクチュアリ
独りで悦に入って肩で風を切るお調子者。それが当時の私
言い訳をさせてもらうとトラブルに遭い過ぎて頭のネジが弛んでいたのです
プノンペンに到着するまでに既に強盗に襲われていました。以前ブログに書きましたがラオスでもイカれた目に遭ってます
プノンペン滞在五日目にはクラブのイベントでなし崩し的に殴り合いに巻き込まれてます
この時の私は知る由もありませんが、2日後にはママチャリで買い物している時に大暴動に巻き込まれてライフルの銃尻で頭を殴られます
不意打ちでしたが犯人はちゃんと見てましたよ、殴ったのは警官です。警官は意識が朦朧としている私を介抱する振りしてお金を盗っていきました
恐らく私の人生でもっとも沢山怪我をした時期です。ちなみに保険に入っていたのですが正直に事情を説明したら一円も出ませんでした。自業自得らしい
くっ、『珍しかったから自分から暴動に近づいた』とか言わなきゃよかった
ホント馬鹿
激安射撃場にて
その日はバイタクのお兄さんに「ガンシューティングに行こうぜ」と誘われました
私が「射撃高いじゃん、金は全然ないぞ、俺貧乏」と言ったら、貧乏人におすすめの店があるらしい
「マジで!? じゃあ行くべ」
貧乏人におすすめの射撃場とか危険な香りしかしないのですが、浮かれポンチな私は気づいてません
そんなわけで到着したのが郊外の射撃場です。といってもボロい小屋がひとつと原っぱが広がってるだけ、ずっと先には山が見えます
ドン、ドン、ドガン
「Oh!!」
山に向けてヒッピーみたいな欧米人たちがロケットランチャーを撃ち込んでます。発射するたびに筒の後ろが火を吹いて凄い音
「HAHAHA!!」
山肌が吹き飛ぶたびに、みんな浮かれてゲタゲタ笑ってますよ、大丈夫かいな
射撃場といえば普通は軍人とかちゃんとしたインストラクターが付いているはずですがそんな人はいません。短パン姿の若い兄ちゃんが3人いるだけ。まだ高校生くらいに見える
私は山が破壊されるたび遅れて聞こえる轟音に、「音って光より遅いんだな」と当たり前のことに感動してました
「ウヒャヒャ! オー!」
空き缶を並べて自動小銃やハンドガンを撃ってる客もいる。みんなテンション高いな
射撃場には子供が沢山いました。的を準備したり缶を並べることでチップを稼いでいるらしい
ここは激安の射撃場でした
当時はロケットランチャーの相場が100ドル前後です。しかしこの店は60ドル。他の銃器も相場よりかなり安い。その分どれも型が古いですが
丸いマガジンをくっつけた短機関銃が並べてあったけど素人の自分でもわかるくらいに古い。アルカポネとか昔のギャングが持ってそうな機関銃です
常連っぽい客の説明だと大戦時のソ連製らしい
「ハローミスター」
やってきたスタッフが言うには軍の協力があるので200ドルで戦車に乗せてくれるみたい。追加料金を払えば主砲も撃たせてやるって。おまけに500ドルで戦闘ヘリも準備してやるとか言ってる
ネタとしては面白いですね。僕らの七日間戦争みたい。でもお金がないので無理っす
それより気になったのは
あそこでバカみたいにはしゃいでロケットランチャーをぶっ放してる外人たち、
酒を飲んでるよね、マリファナの匂いもする
撃つ時にすっ転んだら自爆しないのかな?
スタッフに聞いたら
「OK、大丈夫、ススキノ」
とよくわからないことを言われました
ススキノ?
まあいいいや
とりあえずアイツらからはちょっと離れとこ、巻き添えはゴメンですよ
自慢じゃありませんが安全意識は高いのです
私はスタッフに勧められるまま、ハッピーセットというのをやってみることにしました。マックのハッピーセットみたいですが、内容は手りゅう弾が2個とハンドガンが10発撃てるお得なセットです。30ドルでした。恐ろしく安いな
どうでもいい豆知識ですが当時タイのマクドナルドではテリヤキマックバーガーが『サムライバーガー』という名前で売られてましたよ。今もかな、知らんけど
味は普通に美味しかったです
銃はセミオートマチック?かな。さっそく紙の的に向かって撃ってみました
パン、パン、パン
これは……まあ普通ですね。全然的に当たらんかったけど
正直に言うとまったく感動はありませんでした。前にタイで経験済だったので。初体験だと銃の重さや衝撃に驚くかもしれません
この店のスタッフはフォーム指導をしませんね。自由に撃てました。もちろん銃を扱う時は正しい姿勢で撃たないとダメですよ。肩とか怪我するし
隣の外人がふざけて横向きで撃とうとしてるが気になります。マジでやめて欲しい
受け取った 手りゅう弾はパイナップル型です。手りゅう弾と言えばこうだろ、と言わんばかりのわかりやすい形をしてます
参照 Wikipedia
しかし恐ろしく古い。ボロボロですよ。外装は鉄かな、元の色がわからないほど白っぽく変色してる。いつ作ったんだろ
まったく、こんなゴミみたいな代物で金を取るとは……そのへんから拾ってきたんじゃねえのか
持つと結構重いです。炸薬はその場でスタッフが詰めてました。意外と簡単に分解できるみたい
一応説明しておくと、手りゅう弾には大きく分けて2タイプあります。破片手りゅう弾と攻撃手りゅう弾です。
破片手りゅう弾は爆発時に鋼鉄製の本体容器が破裂して破片を撒き散らすことで周囲にダメージを与えます
攻撃手りゅう弾は爆発時の衝撃波で周囲にダメージを与えます
私が持っているのは破片手りゅう弾です。
当然ですが鉄の破片の威力は凄まじく、人に当たればズタズタに切り裂かれます
私とスタッフは射撃場から少し離れた場所に移動しました。周りには誰もいません。少し先に窪地があって池があります
スタッフは手りゅう弾の使い方を説明してくれました
- 安全ピンを抜く
- その時に安全レバーを押さえていれば爆発しない
- 安全レバーを離すと信管が点火して遅延火薬が約五秒で燃え尽き、爆発する
「投げる時はアンダースローで、あそこの池に向かって投げてくれ」
スタッフの兄ちゃんはヘラヘラ笑って池を指差します。なんだか動きがいちいちラッパーみたいでウザい
「な、難しくないだろ」
得意げにそう言うと私の肩をバシバシ叩く。レクチャー終わり。実にあっさりしてます
池に投げるのは水中で爆発させることで破片の飛散を防ぐためです。地上だと殺傷範囲は半径十メートル前後らしい
私はわくわくしてました。銃はともかく手りゅう弾を投げたことのある人なんて少ないでしょう。帰国したら皆に自慢してやろ
スタッフは私の気分を盛り上げるように笑って口笛を吹く
私はだんだんハイになってきて、スタッフとハイタッチして2人でウッシッシと笑う。そして安全レバーを押さえたまま、手りゅう弾のピンを抜きました
ここでちょっと説明をさせてください
福岡で起きた手りゅう弾を使った事件、実は数件が不発に終わってます
なぜかと言うと実行犯がテンパってピンを抜き忘れたからです
そんな話を聞くと「間抜けだな」と笑う人がいるかもしれません。私も手りゅう弾を経験してなければ笑っていたと思う
しかしですね、考えてください。手りゅう弾というのは爆弾なわけですよ。手足を吹き飛ばす恐ろしい武器です。そんな代物を目標に投げるまでは自分が手で持ってなくちゃいけない
持ち運ぶ時だっていくら安全ピンが刺さってるといっても絶対に爆発しないという保証はない。だから、やっぱり恐ろしいですよ
私には犯人が早く手放したくて、テンパってピンを抜き忘れた気持ちがよくわかります
「安全ピンを抜いてもちゃんと安全レバーを押さえておけば爆発しないんだからビビり過ぎ」と考える人もいるでしょう。たしかに理屈ではそうです
しかし理屈と実際に爆発物を手に持った状況では心理的負担が大きく違います
手りゅう弾というのは使用者に内部構造が見えない作りです。だから「安全レバーを押さえておけば信管に点火されない」とわかっていても怖いのです
だってその様子が見えてないから確認のしようがない
参照 らばQ 手りゅう弾の構造
ここまで不安になるのは殺傷力のある爆発物を扱っている恐怖と内部構造が見えないということもありますが、もうひとつ理由があります
全ての手りゅう弾がそうなのかはわかりません。ただ少なくとも私が持っていた手りゅう弾は安全レバーがガッチガチに硬いのです
硬いのは信管が点火しないように押さえているからなのですが、その構造がよくわかってなかった私は本当に安全な状態なのかわからなくて不安になり、自分の持てる怪力全てを振り絞って安全レバーを押さえてました
ギュ―っとね
そしたらね、手の平になんか変な感触が伝わってきたの
具体的にいうと手りゅう弾の中で何かがパキっと折れた?滑った?感じ、でも安全レバーは折れてない
……
安全レバーは折れてないから大丈夫だよね? アレ、でもなんかグラグラしてるよレバーが
私は「ハハハ、それくらい大丈夫だよ」という言葉が欲しくて横にいたスタッフを見ました
!!!?
ああいう時の人間って凄いね。私が何も言ってないのに兄ちゃんの顔がニヤケ顔から鳩が豆鉄砲顔になって、チョロQみたいな動きで後方へ逃げていきました。香港映画のアクションスターみたいな動きですよ、しかも彼は間に合わないと思ったのかジャンプして地面に伏せました
私もようやくヤバいことになってると気づきます。自分でも自覚してなかったけどパニックだったと思う
パニックになると急がないといけないのに急げませんよね。あれはなぜ?
この時点で信管が点火して2~3秒が経過してたと思う、爆発するのは約5秒後です
ここから視界がマトリックスばりのスローモーション映像に変わりました
人間はマジでヤバい状況に置かれると物事がスローで見えるんですね。あんなの映画や漫画だけの世界だと思ってましたよ
手りゅう弾をアンダースローで投げる余裕はありません。もちろん振りかぶってオーバーハンドで投げる余裕も
だから叩くように投げ捨てました。同時に身体を反転させて跳びました
頭だけは回転が速くなっているので、自分の動きが遅く感じられてまどろっこしくてイライラしました。早く、急げ、逃げなきゃ
池まで届く前にたぶん爆発する。それは予感というより確信でした
カンッッ
完全に後ろを向く前に背後で甲高い音が聞こえ、同時に爆風?みたいなゴゴッて感触が肩と脚を掠めました
痛みはありません。どちらかというと地面に伏せた時の衝撃が痛かったです
でもしばらくすると急に肩と膝が痛くなってきた
こけた時に擦りむいたのかなと思ったら、右膝に黒っぽい板が刺さってました。傷口の奥まで入り込んで一部が見えてる。手りゅう弾の破片です。右肩にも破片が刺さってて血がメッチャ流れてました。
傷を見たせいで痛みが一気に増した気がします
なんじゃこりゃですよ
これって大丈夫なの?こんな汚いものが刺さって破傷風とかならないよね、っていうかカンボジアの医者ってちゃんと治療できるの?っていうか医者はいる?シャーマンとかじゃないよね
痛みとカンボジアの医療水準が心配でアワアワしてました
変な話ですがこれまでトラブルが多すぎたので、自分が一歩間違ったら死んでたとか、そういう感覚は頭からすっかり抜けてました
治療に金がかかるじゃん!
それを気にする程度です
「$%#%''(()))))'&%$$!」
先に逃げたスタッフは起き上がって何か言ってます
あれだけ慌てた癖にもう笑顔ですよ。興奮して何か言ってるけど聞き取れない。ようやく聞き取れたら「クール!」とか言ってんの
「手りゅう弾で怪我した奴なんて初めて見たぜ」とか喜んでる
テメエのオンボロ手りゅう弾のせいだぞ、と言いたかったけど、よく考えたら自分が壊した可能性もあるのであんまり強く言えない
こっちは痛みでそれどころじゃないから「はよ病院に連れてけ!」って半べそかいてギャンギャン文句言ってました
結局騒ぎを聞きつけたバイタクの兄ちゃんが笑いながら病院へ連れて行ってくれました
まとめ
今でも右膝は傷跡がしっかり残ってます。不思議なことに肩のほうが酷い怪我に見えたけど跡は残りませんでした。医者の処置が良かったのかな?
もちろん保険は下りませんよ
これだけの目に遭って得られた教訓は
手りゅう弾で遊んじゃいけません
という幼児でもわかる事実でした
反省してます。ごめんなさい
もし皆さんがカンボジアでシューティングを楽しむならちゃんとした施設に行きましょう。自己責任でお願いします
今は昔よりちゃんとしてるみたいですよ
おしまい