昔むかし、知人が経営していたデリヘルの仕事を手伝っていたことがあります。今から20年ほど前。私がプー太郎の頃
なんでもスタッフがとんずらして人が回らなくなったということでした
半泣きで縋りつかれたので引き受けました。知人は3店舗目をオープンしたばかり
しかしあれですね、風俗系の商売でスタッフがバックレる時は大抵金を持ち逃げする法則が働きますよね。なんでしょうねあれ、マーフィー的な何かかな?
オーナーが泣くのでやめてあげて欲しいです
仕事内容は電話受付や女性スタッフの送迎です。あとは備品の買い出しとか諸々の雑用
今回はその時の経験からみかじめ料について語ってみます。昔の話なので現状は違うかもしれませんが
追記、確認したら最近も相場はあんまり変わってませんでした。すごいなデフレ
みかじめ料とは
飲食店や飲み屋が地元の反社会的勢力に支払う場所代、用心棒代のことです。日本だけでなく世界各地に似たような習慣?があります
もちろんみかじめ料を要求するのは違法行為です
2019年には都暴力団排除条例改正、施行
東京都では去年の10月に都暴力団排除条例が改正、施行されました
内容は暴力団が飲食店等から徴収する『みかじめ料』、『用心棒代』について、『支払う店側も罰則の対象となる』というものでした
目的は暴力団の資金源を断つため
これまでもみかじめ料の要求をした者は恐喝で立件されていたのですが、支払う店側にも罰則を与えることで、「持ちつ持たれつ」の関係にメスを入れたのです
この条例は東京都で施行されています。私の地元にはまだありません。しかしいずれこの波はやって来そうです
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みかじめ料の相場
20年前、なおかつ九州在住の私が知ってる範囲での話になるけど、みかじめ料の主な対象はキャバクラや風俗店でした。あと雀荘の経営者でも払ってる人がいましたね
繁華街だと普通の飲食店でも払ってるケースがあります。しかしそれほど高額じゃないはず。たぶん月に1~3万円くらいだと思う
支払いは現金でなく植木のリースやしめ飾りを割り増しで購入するといった形が多かったです
私の働いていた店は現金で渡してました。金額は地方で働く女性事務職の初任給くらいかな。結構高いです
同業他社の話を聞くかぎり、10万円~20万円が相場なのかなと思いました。ただどうやって額が決まるのかは謎です。売り上げを加味してるとは思うけど我々の店よりも大きく稼いでいるのにみかじめ料が安い店もありました
飲食店のみかじめ料が安い理由は簡単です。、面倒臭いトラブルがあんまりないから
精々酔っぱらいが暴れたとかが関の山。そんなのだったらポリスメンを呼べば済みますからね。ラーメン戦争はあっても血で血を洗う抗争には発展しようがない
キャバクラや風俗店はトラブルが多い
私はデリヘルのことしか知らないけど、女子が提供する接客サービスで成り立つ商売であれば実態はキャバクラも店舗型風俗店もそれほど変わらないと思います
露骨な引き抜きをされる
デリヘルは女性がいないと商売になりません。女性の数が売り上げに直結します。店は人集めに必死です。在籍する女性キャストのバックレ率はなかなか高く、遅刻や無断欠勤をする人もいます。予約が入っているのに黙って消えるとかドタキャンとか日常茶飯事でした
そのたびに私が客に頭を下げないといけません。店は真面目な人を求めていました
引き抜き行為はご法度です。とはいえ横行していました
売り上げに貢献してくれた優良キャストがパタリとシフトに入らなくなる、しばらくすると他店に別の名前で出勤してる。どうもその店の関係者が好条件をチラつかせて移籍を促したらしい(こういう情報はすぐに流れてくるのです)
本来はキャストがどこで働こうと彼女たちの勝手です。相手の店に文句を言ったところでどうしようもありません、しかし黙っていると舐められます。「あの店は何も言ってこない」と調子に乗って堂々と引き抜き行為を繰り返されるのです
そんなわけでこっちも冗談じゃないと電話で苦情を申し立てるのですが、相手がみかじめ料を払っている店の場合、とぼけられるかしつこく食い下がると
ああ゛なんだお前! そりゃあ〇〇会の〇〇組に喧嘩を売っとるってことか
といった感じのことを遠まわしに匂わされます。そんなん言われたら尻尾巻いて逃げるしかないじゃんね
私が働いていた店は当初みかじめ料を払ってなかったのです。つまりこっちには後ろ盾がない
あまりに強引な引き抜きをするふざけた店があり、一度オーナーが相手の事務所に出向いて直接話合いを持ったことがあります。なぜか私を同伴で
相手側には用心棒的な柄の悪い守護霊が同席してました。どう見ても堅気じゃないタイプ。げ、白シャツからもんもんが透けてますよ。肌着をきてないとか絶対わざとですよ
すごく怖いです
「引き抜きは違法行為じゃないでしょ、そもそもアンタら女と雇用契約は結んでないしな、なんで文句言ってんの?」
開口一番、守護霊は薄笑いを浮かべてそう言いました。
そりゃあ法律違反じゃないけどそれを言ったら収集がつかなくなるじゃん。仁義ってもんがあるでしょうよ
そう思ったけどもちろん口には出せません。彼らは始めから議論なんてするつもりはないからです。これは脅しです
こうなったら話合いになりません。黙って引き下がるしかない。相手の匂わせた組の名前はそれなりに有名な異名をもつ組織でした
戦闘力が違い過ぎます
地方都市の暴力団ってなんだかクラシカルな異名が多いのですよ。『人斬り以蔵』とか『千人斬りの…』みたいな感じのやつです
他にもトラブルあるよ
引き抜き以外にもトラブルはあります。多いのは酔っ払いやチンピラ客の迷惑行為です
ホテルにやって来た女性キャストを怖がらせる。オプションにはないサービスや違法行為の強要(本番行為とか)。要求が通らないと怒る、怒鳴る
あとね女を怯えさせるだけが目的のゲス野郎もいます。とにかく女相手に威張り散らしたいだけ。これはチンピラよりも普通っぽい(むしろ貧弱)身なりの男に多いですけど
特にネジの緩んだタチの悪いチンピラには手を焼きます。怯えた女性が半泣きでサービスを中断して部屋から逃げ出すと「金を払ったのに勝手にサービスを中断しやがって! 殺すぞ」
とドライバーや店を恫喝してくるのです
女性が怖がって出勤しなくなれば店は大打撃です
我々はこの手の輩には容赦しません。こういう相手にイモひくとキャストの間であっという間に噂が広まります。ネットに書き込まれたら大変ですよ。「あの店はトラブっても守ってくれない」などど噂された日には今後の人集めにモロ影響が出ます
しかしいくらお灸をすえてもこういう狼藉者はゴキブリのように現れるのです
その結果、せっかく集めた女性キャストが怯えて辞めてしまう。「すみません、もう辞めます」と連絡を受けるたび私とオーナーは膝を抱えてしくしく泣くしかない
今はどうだか知らんけど当時はこういったトラブルに警察は介入してくれませんでした。ポリスめ、自分たちだって風俗を利用してる癖に見下してるから気に入らない
よく風俗店で働く女性だったらトラブルに遭うのは仕方ないみたいなことを偉そうに言う人がいますよね。たいていはネットで世間を知った風に喋る頭でっかち童貞野郎です
そんなわけねーだろと思う
どこで働いてる女だろうがやっちゃダメなものはダメですよ
みかじめ料のメリット
オーナーはコネを頼りに県内有数の組織にみかじめ料を払う約束をしました
悪魔と取引したのです
払った後は劇的な効果がありました
まず引き抜きを堂々とする迷惑店は激減しました
我々の店にもスタープラチナ(やっちゃんバージョン)がいることはすぐに噂で広まったようです
まあ私とオーナーも積極的に吹聴して回ったけど
そしてタチの悪いチンピラ客が現れた時は「来てよパーマン!」とばかりに電話で召喚
このパーマンは時間にルーズですがやることはやってくれます。我々が頑張るより遥かに効果的に相手を威嚇してくれるのです。なかなかエグい追い込みをかけてましたよ
そうやって脅された話はチンピラどもの間で広まり、トラブルも減るというわけです
あとね、バックにヤクザがいることで風俗歴の長い女性が集まりやすくなりました。彼女たちは事情通なので後ろ盾がある店に安心を覚えるみたいです。もちろん反対の効果もあるのでどっちが良いとも言えんけど
デメリット
メリットだけじゃなくデメリットもちゃんとあります
みかじめ料というのは店とヤクザの間で正式な契約を結んだ行為ではないので気まぐれで額が変わります
変えられても文句は言えません。だって怖いから
というか恐らくですが増額分は受け取りに来たヤクザがポケットに入れてたと思う
それに召喚するとみかじめ料とは別にお小遣いを払う必要もありました。これは案件によるけど数万〜20万円。なのであんまり多用はできません
あとね金を払わんで店のサービスを利用する者もいます。ツケとか言ってるけどほとんど払ってもらったことがないです。当然キャストには報酬を払わないといけないので店が損するだけ
こういう身勝手な行為が頻繁に起こるので信用はできませんでした。
それに店が増えて売り上げが大きくなるとみかじめ料もどんどん上がったんですよね。最終的に倍近くになってました。警察の締め付けが厳しくなってきた時期でもあるのでそれが影響してる可能性もあったと思う
オーナーはこの額を払うメリットがあるのかいつも悩んでました。実際はみかじめ料だけでなくさっき書いたように色々な出費もあったし
さらに地味にイラつくのがあいつら態度がでかい
私は何度もコンビニまでパシられました。煙草とかビールとか。もちろん私の自腹です。一度はマルボロのライトだかウルトラライトだか微妙に違うのを買ってきてしまい「お前本当に使えねえな」と言われた時は心の中でグーパンを何度振るったことか
たぶんオーナーもこれが一番引っかかってたんだと思う。自由を求めて風俗界で一旗上げたのにヤクザにペコペコしたくないのです。彼もどちらかといえば短気でしたし、元ヤンですし
ヤクザが偉そうに集金に来た後、決まって我々は「あいつらなんであんなに威張ってんだよ。死ねばいいのに…」といつもブツブツ言ってましたからね。売り上げが悪い時でもみかじめ料を下げてくれないのもストレスです
まとめ
当時、みかじめ料による恩恵は確かにあったと感じます。最初のうちは私もオーナーもウハウハ笑ってましたからね。悪い奴をやっつけてくれる魔法のランプを手に入れた気分でした。水商売におけるトラブルでは警察の動きが鈍いので抑止力はありました
しかしお互いに信用する要素がどこにもないのでいずれは破綻する関係です。相手は金ヅルとしか思ってないわけですし。実際にオーナーはその数年後、ガチ切れして揉めに揉めました
しかも最近は取り締まりが厳しくなり、やくざがヤクザと名乗るだけで脅迫罪で逮捕される時代です
ヤクザに限りません。一般人であっても暴力団の名前を挙げて人を脅す行為は処罰されます。確か脅迫罪より重かったはずです
つまりみかじめ料を払ってもヤクザのネームバリューは使いにくくなってます
さらに冒頭で書いたようにみかじめ料を払った店も処罰される
うん、デメリットしかないな
私は対岸の火事として今後の風俗業界がどうなっていくのか注視していくことにします
あとこれだけは誤解がないように言っておきますが風俗業界が暴力団と必ずしも密接なわけではありません。特にデリヘルは一般人が経営してることが多いですよ
おわり~