ダメラボ

ダメなおっさんが色々と妄想していますよ

【富豪刑事】昔、推理クイズが好きだった人におすすめする連作短編小説:筒井康隆

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私が子供の頃に推理クイズ本というのが流行っていました

探偵やスパイ、警察官が登場する1、2ページの短いストーリー。最後がクイズ形式になっていて犯人を当てるというもの。一冊につき20~30問程度は載ってたと思う

 

内容は殺人事件の犯人を当てたり、容疑者の証言から嘘を見破る、不可解な現象の謎を解く。など色々とありました

 

簡単に言うと読者が探偵になりきって事件を解決するという構成です

正解は次のページに書いてあります

 

これが非常に面白くてですね、当時の私は夢中になって読んだものです。子供が想像力を鍛えるには最適な本だと思う

 

妄想がたくまし過ぎて私みたいなおっさんになる可能性もありますけど

 

調べてみたら今も推理クイズ本は出版されていますね。いくつか読んでみましたけど昔に比べて一問のボリュームが少ない。ストーリー色が薄まり、クイズ色が強くなっているようです。そのぶん問題の数は多い

 

【富豪刑事】は昔懐かしい推理クイズ本の雰囲気が漂う連作短編小説です

 

作風はコントっぽくて笑えます。エンターテイメント色が強め

書いているのは筒井康隆。個性的な登場人物ばかりでブラックジョークも健在です。でも他の作品に比べると控えめかな・・・

収録されている短編は4つ

  • 富豪刑事の囮
  • 密室の富豪刑事
  • 富豪刑事のスティング
  • ホテルの富豪刑事

 ゴージャスな大人の推理クイズ本って感じでしょうか

 

もちろん内容はちゃんとした短編推理小説ですよ。クイズ形式ではありません

でもストーリーの構成にどことなく昔の推理クイズ本の懐かしさが漂ってるんですよね

文章は非常に読みやすいので、読書が苦手な人でもとっつきやすいはず

 

作品は1975年から1977年にかけて『小説新潮』にて発表されていました。単行本化されたのは1978年

かなり古いな。私が生まれた年じゃん

とはいえ他の筒井作品がそうであるように、この作品は今でも十分に面白いです

 

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2005年にはテレビ朝日制作、深田恭子主演でドラマ化されています。視聴率は好調で翌年には続編が放送されていますね。私は見てません

 

ちなみにドラマでは深田恭子が主人公ですが、小説では神戸大助という青年が主人公です

 

簡単なあらすじ

刑事課捜査1係の刑事、神戸大助は大富豪である神戸喜久右衛門の1人息子

大助は礼儀正しいナイスガイですが、少しのんびりした性格で、振る舞いがブルジョワ過ぎるので、同僚からは呆れられたり苦々しく思われていました

 

若造のくせにキャデラックを乗り回して、いつも葉巻を吸ってますからね。私が同僚だったら粛清してやりますよ

 

そんな彼が4つの難事件に挑みます。といっても潤沢な財産を湯水のように使って犯人を炙り出すわけですが

 

ぶっちゃけ金の力で無双してるだけ

 

本格的な推理小説を期待した人は怒るかもしれません

 

筒井康隆が作中に登場して「本格推理なんて初めてだから許してちょ」と書いてます

 

許しましょう、面白いから

 

大助のお金の使い方は清清しいほどの大盤振る舞いです。もう完全にネタの域。こち亀に例えると中川君レベル

彼がどういう風に大金を使って事件を解決するのか、それも見どころの一つです

 

さきほど、私はこの作品が推理クイズ本に似ていると書きました

実はあの手の本の答えには非現実的なものが結構あって、私は小学生ながらに「それはねーよ」と突っ込みを入れるほどでした

理屈としては可能かも知れんけど現実には無理だよねって感じの答えが多かったのです

 

そういう荒唐無稽さも『富豪刑事』と似ていて、それが本作の魅力でもあります

 

つまり小難しいことは置いといて楽しければOKなわけです

そうは言っても私は推理物としても十分に楽しめましたけどね。あくまでコアな推理小説ファンはトリックに物足りなさを感じるだろうというだけ

見どころ

登場人物はコミカルで楽しい人たちばかりです

例えば大助の父、神戸喜久右衛門は若い頃から悪逆非道の限りを尽くして財を成した人物。しかし今ではそれを激しく後悔していて、口癖のように「こんな汚れた財産はさっさと消えちまえ」と大助に散財を命じています

ところが元々商才がある上に優秀なスタッフに囲まれている喜久右衛門が無駄遣いをしようとするたび、お金が儲かってしまい、さらに財産が増えるという哀しいことになってしまいます

そのたびに喜久右衛門は癇癪を起してプンプン、「ぶっ殺してやる」とばかりに周囲の人間に当たり散らす

また喜久右衛門はテンションが上がると昔の非道な振舞をポロっと白状してしまうというお茶目な一面も、そのたびに息子や秘書に慌てて窘められちゃう

オマケに彼は興奮するとすぐに発作を起こして死にかける

喜久右衛門の一連の行動が本作では一種の様式美になっています

 

また、事件が解決するといきなり踊りながら登場する署長なんて意味不明な面白さがあります

署長は踊りながら刑事たちに「ご苦労さん」というだけの役どころです。それ以外に出番はありません

他にもおもちゃ箱をひっくり返したように沢山のキャラが登場して、ワチャワチャしてます

 

凄いのがこれだけ多数のキャラが登場するのに読んでいても混乱しないんですよ

 

脇役からメインキャラまで無駄にしっかりとキャラ付けされているおかげです。名前や性格がしっかりと定着してるので「誰だっけ?」と思うことがない

どのキャラもそれぞれを主人公にして小説が書けるほど濃いです。実際に筒井康隆は作中でそう語っています

 

筒井康隆本人がちょいちょい登場してますが、それもこの作品の特徴ですね

たまにキャラが読者に語りかけるシーンもあります、古畑任三郎みたいに

 

まさにコントみたいな作品です。でもしっかりエンターテイメントもしてるので先が気になってあっという間に読んでしまいますよ

まとめ

 筒井康隆の作品にしてはヤバめの毒は少ないです。でも相変わらず筒井康隆してる作品でもあります。荒唐無稽さも健在

私は凄く気に入ってるのですが、小説は続編が出てませんね

話によると筒井康隆はこの4編を執筆するのに2年近くかかったらしい

長くかかっても構わないので続編が読んでみたくなる一冊

本格推理小説ではないけど、上質な娯楽推理小説ですよ

おしまい

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