アメリカのSF作家であるロバート・A・ハイラインはアーサー・C・クラークやアイザック・アシモフと並んでSF界を代表する作家の1人です。
夏への扉以外にも『宇宙の戦士』『月は無慈悲な夜の女王』など数多くの名作を発表し、今でも世界中で読まれています
名作です。 評論家の評価は低いけど、ロバート・A・ハイラインの代表作
今回おすすめするのは【夏への扉】です
冷凍睡眠とタイムマシンが登場する
時を駆けるおっさんの物語
実はこの作品は本国アメリカよりも日本で人気の高い作品だったりします
SFファンの間では評価が分かれる作品でもありますね
ネットやブログで自分の好きなSF小説トップ10に夏への扉をランクインして発表すると
顔真っ赤にしてディスってくる人が高確率で現れますよ。ムキーって
「夏への扉が名作だと! このニワカが!」
「ストーリーが行き当たりばったりで緊張感に欠けるんだよ!」
って感じで
そんな夏への扉ですが
私は好きですね。面白いですよ。作者がエンターテイメントに徹しているのを強く感じます。ロマンチックな話ですが甘ったるくもないし
物語の最初の舞台は1970年のアメリカです。史実と違ってマンハッタンやニューメキシコの都市が核で吹き飛んでいます。とはいっても世紀末的な悲壮感はありません
この作品が発表されたのが1956年。なので1970年のアメリカは未来設定が盛り込まれてちょっと不思議な世界観で描かれています
評価の分かれる作品と言われてますが、アマゾンの評価は軒並み高いです
物語に癖はありません。親友と恋人に裏切られた主人公が頑張る話です
サスペンス要素や緊迫したシーンもありますが、ゆったりとした空気に包まれているので読んでいても嫌な気分になりませんね
読後感も良い。中高生でも安心して読めますよ
同じ作者が書いた『宇宙の戦士』みたいな社会批判や皮肉、政治思想を語る描写もありません
あれはあれで楽しいですけど、苦手な人はいると思う
もし『宇宙の戦士』を先に読んでハイラインに苦手意識を持ってる人がいたら、夏への扉にトライしてみてください
作風がガラっと変わってて驚くと思う
SF小説に興味はあるけど、なんか難しそう
そんな風に二の足踏んでる人に是非読んで欲しい作品です
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あらすじ
1970年。親友と恋人に裏切られ大事な発明品を奪い取られた発明家のダン。彼はオーナーでもあった自分の会社も追い出されてしまいました
ダンは酒浸りの毎日を過ごし、今日も飼い猫のピートと一緒にバーにいました
もううんざりだ……
人間不信になっていた彼は『ミュチュアル冷凍睡眠保険』の広告を見て名案を思いつきます
そうだ!自分を踏みにじった連中のことなんて寝て忘れてしまおう。きっと寝ている間に未来はもっとましな世界になってるはずだ。悪い世界になってたとしても今よりはマシな気分になれる
未来で目覚めた時、美しい元恋人が醜く老いている姿を見れば、やり場のないこの怒りが少しは晴れるかもしれない
ダンはピートと共に冷凍睡眠に申し込みました。行き先は30年後の2000年
しかし事は順調に進みませんでした
2人?は元恋人の凶行により離れ離れになってしまう。ダンだけが薬で眠らされ冷凍睡眠で未来へと送られてしまったのです
2000年に目覚めたダンはピートがいないことに絶望し怒り狂います。さらに不運なことに信託していた財産を保険会社の倒産により全て失っていました
ダンは生活のために仕事を探し、未来世界で生きていくことを決めます
先進的な未来のロサンジェルスに戸惑うダンでしたが、どうにかスクラップ工場で働き口を見つける
悔しいことに30年前に奪われた発明品を扱う会社は巨大な一流企業となってました
ある日、彼は発明品の特許にまつわる不審な記録に気づき、調査を開始する
ちょっとロリコン気味のおっさんが30年の時を駆けて見つけた真実とは……?
見どころ
物語の骨子は奪い取られた発明品の謎や消えたヒロインを探すために奮闘するダンの姿です
ヒロインはダンを裏切った親友の義理の娘、リッキイ11歳
この年齢設定のため主人公をロリコンだと叩く人もいます。ちなみにダンは30歳です
実際は時間の行き来があるのでヒロインは21歳として落ち着くのですが、11歳の少女に結婚しようと言われて感動する主人公のシーンはたしかにちょっとキモいかも
しかしまあそんな事は些末なことです
ストーリーは先が気になるように上手く構成されてます。テンポも良い。タイムトラベル物の定番である仕掛けが随所に見られます
よく考えたら60年以上前の小説なんですよね。でも古さは感じませんね
なにより凄いのが作中に登場するダンの発明品、万能フランク(家事ロボット)には動作を記憶させる概念として外部記憶媒体のようなパーツが使われていたり、製図機ダンという機械はCADシステムに似ていることです
60年以上も前に著者であるハイラインは未来を見通すようにこれらの機械を描写してました。機械の機能や製作工程にはリアリティがあります
まさにSF作家ですね
あとですねダンはめっちゃ猫好きです。私は猫の生態に詳しくないけど、猫LOVE な様子がヒシヒシと文章から伝わってきます
ストーリーも良いけど、私がもっとも気に入ってるのは
作品全体を覆うノスタルジックな空気。セピア色のどこか懐かしくて、昔話を思い出すような語り口
緊迫した展開でもこの空気感が不思議な緩衝材になってくれます
それが故に緊張感のない作品と言われたりもしますが
なんか好きです。この雰囲気
まとめ
SF小説としてはその空気感が非常に独特な作品です。もちろん悪い意味じゃない
これを味わうだけでも十分に価値のある作品だと思います
評論家には受けが悪いですが素敵なストーリーですよ
私はこの作品を読み終わって
これは俺がずっと持っておくべき小説だ
っと思いましたね。そんな小説
一度読んでみてください。SF小説の印象が変わりますよ
おしまい