※流人道中記は2019年10月13日に連載が終了しました。大変素晴らしい作品でした。ブログ主がこの記事を書いてる時はまだ連載中でした。
『流人道中記』は読売新聞で連載中の小説です。まだ連載は終わってないですけど
初めて新聞の連載小説にはまっちゃいました。しかも時代小説
やべえ、マジで面白いっす
武士を主人公にした作品って数冊しか読んだことありませんでした。なんとなく敬遠してたんですよ。理由は特にないんですけど、しいていうならちょっと退屈?
それがね、なんとなく読み始めたんです。本当になんとなく
すみません、なんとなくばっかりで
だらだらと毎日暇つぶしで読んでました。手に汗握るような作風じゃないので、先が気なってしょうがないという程でもない
それがいつの間にか新聞を開くと一番最初に読むようになってた
「アメリカが関税を引き上げた? 知らんがな。それより流人道中記!」
「北朝鮮の飛翔体!? とりあえず却下」
って感じです
大谷君の怪我からの復帰よりも亀吉がどうなるのか、それだけが心配で心配で
不思議ですよね、今までに浅田次郎さんの作品は数冊読んでました。『鉄道員』や『歩兵の本領』『プリズンホテル』等
でもそこまで夢中にならなかった
それなのに時代小説というあまり好きじゃないジャンルではまってしまいました
今更ですが浅田次郎という作家はすごい人です
猛烈に感動した私はウィキ先生で調べちゃいました
小学生の頃から1日一冊本を読み、気に入った本は原稿に書き写すほどの活字中毒
13歳の時に集英社の『小説ジュニア』に初投稿して以降、数々の新人賞に応募と落選を続け、30歳ぐらいの時に群像新人賞の予選を初めて通過した(最終選考には残らなかった) 浅田次郎 - Wikipedia
仕事も自衛隊やライターとして風俗レポ、競馬予想、色々なことをやっていました。そして40歳の時に『とられてたまるか!』でデビュー
遅咲きの作家さんだったようですね。ウィキには面白い逸話が沢山あったので興味のある方は読んでみてください
浅田次郎は大変な読書家で歴史小説も得意としてました
博識なだけじゃありません、『流人道中記』では武士の習慣や庶民の生活文化を無理なく物語に落とし込んでるんですよ。読んでいてスッと頭に入ってくる
少し前に読売新聞のインタビュー記事で、流人道中記は物語としての面白さを優先させるために、歴史考証にこだわり過ぎないようにしていると言ってました。うるさい人がわざわざイチャモンをつけにくるらしい
登場人物の掛け合いはサラリとしているのにユーモアと人情味に溢れてる。でも決して湿っぽくない
心理描写は簡潔にして的確
ぶっちぎりで読みやすい文章
視点は一人称と三人称を混ぜているのにまったく不自然さがありません
時代小説が苦手な人でも無理せず読めますよ
浅田ファンにしてみれば「何をいまさら言ってんだ!」って話でしょうね
さーせん
きっと今までに読んだ浅田作品もそうだったんだと思います。なのに私は気づいていなかった
切腹ものですね、申し訳ないでござる
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流人道中記のあらすじ
1860年、江戸末期
不義密通で捕らえられた旗本の青山玄蕃は切腹を拒んだことで蝦夷送りとなる
護送を命じられたのは見習い与力の石川乙次郎という青年です
真面目実直の乙次郎はまだ19歳の若者。貧しい下級武士の次男から婿養子として石川家に迎え入れられ与力の職についていました。本来なら与力になどなれない身分です。
乙次郎はそのことにコンプレックスを抱きながらも、今は罪人とはいえ本来なら口を利くこともできないほど身分の高い青山玄蕃の護送をすることに
江戸から蝦夷松前までの距離はおよそ900キロ、二人の長い旅路が始まります
この物語の肝は乙次郎と玄藩の関係性にあります
破廉恥な行いをした玄藩は「腹なんか切れるか」と豪語して蝦夷送りになるのですが、乙次郎はそれが許せない。武士の価値観に照らすと玄藩の言動あるまじき行為。しかも玄藩の妻子はお家取り潰しで路頭に迷う運命です
貧しい暮らしから婿養子として石川家に入り、肩身の狭い思いをしながらも石川家を守る立場の乙次郎からすれば、武士の矜持も家族も守らぬ玄藩は憎悪の対象でした
しかし玄藩という侍がこれまた魅力的な人物なんですよね。普段の言動は粗野なのに、人前にでると旗本の貫禄十分、礼儀作法もバッチリ。だから護送中に出会った人々は玄藩のことを罪人だとは気づかない。それにこの男には人情もある
そういった玄藩の姿は乙次郎にとって憧れでもあり、余計に憎しみを掻き立てるのでした
映画化されたら売れると思う。ジャンルは幕末版ロードムービー
19歳の乙次郎と35歳の玄蕃。二人の侍は道中に様々な人々と出会い、時にはトラブルに巻き込まれます。
全盲のあん摩師、お尋ね者の賞金首、顔も知らぬ親の仇を数年間に渡って探し回る侍
たいていの場合は飄々とした玄蕃に乙次郎が振り回されるという形なのですが、時には乙次郎だって意地を張る。「融通が利かない」と笑われるけど乙次郎にも抱えてきたものがある
この物語は二人が旅を通して少しずつ理解を深め成長していく姿を描いています。実は玄蕃も口には出せない事情を抱えているのです
侍とはどうあるべきか? 幕末、長い侍の世にあって法に囚われ礼を忘れた侍に価値はあるのか?
なんかこう書くと凄くありがちで陳腐ですよね。もっと文才があればこの作品の魅力を伝えられるんですけど
とにかく超良い作品です
現在『流人道中記』は佳境を迎えています。今までののんびりした空気が消え、二人は緊迫した状況にあります
そんな訳で最近は毎日明日が早く来ないかと気を揉んでる所であります
……よく考えたら明日が早く来たら益々おっさんになりますね、もう40だしそれはちょっと嫌かも
まあいいか
書籍化されたら間違いなく買います
追記、書籍化されました!
おしまい