ダメラボ

ダメなおっさんが色々と妄想していますよ

海外文学初心者におすすめ。【海の上のピアニスト】少ない文字で紡がれる船から決して降りなかったピアニストのお話

道一つとったって、あんなにたくさんある。きみたち陸の人間は、どうやって自分の進むべき正しい道を見分けるんだい?

 

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著者はイタリアの人気作家 アレッサンドロ・バリッコ

 この作品は同名の映画も作られています。映画の方が有名かもしれません。ティム・ロス主演、監督は『ニュー・シネマ・パラダイス』でアカデミー外国語映画賞を受賞したジュゼッペ・トルナトーレ

 

外国の小説に対して、

 『読んでみたいけど小難しそう』

『言い回しが独特過ぎて目が滑る』

 そんな人に是非読んでもらいたい作品です。

 

ユーモラスで優しい語り口から描かれるちょっと変わったピアニストの生涯。

読んでいるだけで心に音楽が流れるような文体です

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この小説は戯曲っぽく書かれています。そのため文字数が少なく、行間が広くとってあり、海外文学の入門書としてもうってつけ

 

とはいえ子供向けというわけじゃありません

 

主人公の生き様や広い世界に対する恐れは、誰もが根源的に持つであろう不安を代弁しています

登場人物のセリフは軽妙でくどくない、けど読み終わると心にグッとのしかかるものがある、そんな作品です

 

 

あらすじ

1900年、毎回千人以上の客を乗せてヨーロッパとアメリカの間を航行するヴァージニアン号。客は金持ちから貧しい移民まで様々、移民の多くはアメリカを目指していました。

ある日、老船員のブードマンは船内に置き去りにされた赤ん坊を発見します。移民が船を降りる時に捨てた赤ん坊でした。

突然父性に目覚めた彼は赤ん坊を育てることにします。
赤ん坊には自分の名前とダンボール箱のキャッチコピーから拝借し、ダニー・ブードマン・T・D・レモン・ノヴェチェントと名づけました。

 ノヴェチェントは船員たちに見守られてすくすくと育っていきます。しかしブードマンは息子が当局に保護されるのを恐れて、決して陸に降ろそうとはしませんでした。
そのためノヴェチェントは戸籍無し、書類上は存在していない人間となってしまいます

父の死を境に天才的なピアノの才能を開花させたノヴェチェント。

彼は船上で様々な人々と出会い成長していくのですが、ある時船を降りようと決心します。

タラップに足を乗せて、いざ船を降りようとした彼がそこで見た世界とは……

 

見所

船の中という限られた場所で物語は進行していきます。

登場人物は多くないので脇役でもしっかりと描写されているのが特徴です。主人公とピアノ演奏で決闘するジャズピアニストなんてまさにそう。

それほどページを割いてないのに決闘シーンが目に浮かぶんですよね

 

物語はノヴェチェントの友人であるトランペッターの視点で語られています

 

ノヴェチェントの謎多き行動――きっと本人はそんなつもりはないのでしょうけど――がトランペッターによってジョーク混じりに表現されるのですが、それは最後まで船から降りることができなかった主人公に対してどこまでも優しくユーモラスなのです

 

語り口調は軽いながらも寓話のようなメッセージが込められてる

 

人間は自由でいたいと思いながらも、完全な自由など求めていません。囲いのない無限の自由なんて混乱するだけだからです

それはノヴェチェントだって同じこと、彼はそれをピアノの銀盤になぞらえて語ります。どんなに凄いピアニストにだって無理なものはあると

 

サン=テグジュペリの『星の王子さま』に登場するキツネのセリフを思い出しました

 

「大切なことはね、目で見えないんだ」

 

ノヴェチェントにとっては、大切なものだからこそ目で見えないと困るわけです

 

『星の王子さま』は読み終わった後にちょっと悲しい気分になりますが、この作品は哀しい物語のはずなのに読後感が嫌じゃないんですよね

 

登場人物たちがコミカルでジョークが効いているからだと思います。それに説教臭くない

 

物語の終盤、世界大戦を経験したトランペッターや船員たちは苦しい時期を過ごします。だけど相変わらずとぼけていて明るい

 

哀しいけど決して暗くない、そんな不思議な物語です

 

まとめ

私はハードカバーでこの作品を購入しました。ボリュームとしては短編小説くらいの文量かな。サラリと読めるのにいつまでも印象に残る小説です

 

 映画の方も良い作品なのですが、この本を読んだ人は映画を見るのを躊躇うかも

 

『海の上のピアニスト』は少ない文量で語られるおとぎ話的な物語だから想像の余地が広いんですよね。『思い描いていた世界を壊されるかもしれない』と不安になるかもしれません

 

 私は映画と小説を別の作品だと思って楽しみました。

 でもこれだけは断言できますよ。映画も素晴らしい出来です。たしか大ヒットしたはず

 

音楽は数々の名作を手がけたエンニオ・モリコーネ。『アンタッチャブル』や『ニュー・シネマ・パラダイス』も担当してました。超有名だから知ってる人も多いと思います

 

 私は観たことないのですが東京ではこの作品を芝居として公演してます。都会はいいなあ

 

外国の小説って読む人が少ないんですよね

今後もブログで色々と紹介していこうと思います

 

『海の上のピアニスト』

 

興味がわいたら是非読んでみてください

ぼくが不幸せだなんて考えないでくれよ。もうけっして落ちこんだりしないから