今日の話もフィクションです
長い前フリにして話のほとんど
ダメラボ社長の朝は遅い
お店のオープンは9時だけど最近は眠いので10時にオープンしている
このコロナ禍を生き抜くためには体調に万全を期すのは当然のこと
そんな舐めた経営をしている私にはジムオーナーとは別の顔があったりもするのだ
それは、
よろず相談所である
この荒んだ世の中において迷える子羊たちが希望を見出すお手伝いをする
いつの頃からかそれが私のライフワークとなっていた
今日も朝から迷子の子猫ちゃんがやって来たぜ
「山口さーん、お久しぶり~」
いつも明るい雰囲気のサバサバ系女子、椎名さん(仮名)32歳である
……
イラストで話を進めようと思ったけど時間がかかり過ぎるのであとは文章だけで
椎名さん(仮名)の用件
ちょっと怪しげなマッサージ店を開きたいので、そういう商売OKな物件を扱う不動産屋を紹介して欲しいという話でした
ちょっと怪しげなマッサージ店というのは風俗店ではありません
あくまで健全なマッサージ店だけど
スタッフは女性だけで構成されてるけど
提供するのは普通のオイルマッサージだけど
「おっふ!?」
男性客をマッサージする時にお手手が滑ってしまい局部にダイブしてしまうことが稀にあります。あくまでたまたまですけど…
男性客は女性スタッフが偶発的に起こすハプニングを期待してマッサージ店に通うのです
私はとりあえず二人の不動産屋を紹介しました。一人はいつも世話になってるようであんまりなってないような気がするアル中のおっさんです
もう一人は後援している市議会議員を勝たせるためにライバル候補の選挙活動に野良犬を使って妨害して逮捕されたおっさんです(昔の話ですよ)
控えめに言ってもどうしようもない人たちですが
二人は風俗店専門の司法書士だか行政書士だかと付き合いがあるので物件情報を豊富に知ってるはずです。たぶん
用件を片付けた後は世間話をしました
椎名さんはお話好きなので近況をペラペラと語ってくれます
「―こんな時代だからさ~攻めたビジネスをしないとダメだと思うんだよね」
「そうですねー」
「『失敗するかも…』って結果ばかり気にしてたら前に進めないでしょ、失敗した人に『ほれ言わんこっちゃない』なんて笑う人もいるけどそんなの無視。私はポジティブだからさ、そんな雑音は気にならないの。ダメだったらその時は素直に撤退すればいいだけだと思うのよ。ねえ、そう思わない?」
椎名さんは色々な商売に手を出している人です
だけど私が知る限りそのほとんどがあまり上手くいってません
裏表のない性格で誰とでも物怖じせずに話すことができる。客商売は向いているように思われるのですが……
彼女はひとしきり語ると付け加えるように言いました
「この間さあ、投資してたお金を持ち逃げされちゃって」
さらっとそう言う椎名さん
「投資?持ち逃げ? ……なんですかそれは」
詳細を聞くと、信頼している人から紹介された男が凄腕の投資家らしく「自分にお金を預けてくれたら月に3%の利息を約束する(年利36%以上!?)」と言われて数百万円を預けたらしい。
ところが半年後にとんずら
急に椎名さんが「思い出したくないからこの話はもうしたくない」と言い出したので話はそこで終わり
私は嫌な予感がしました。彼女からこういう話を聞くのは二回目です。前回も信頼している人に紹介された投資話でかなりの損失を出してます
「……もしかしてその『信頼してる人』ってAさんのことですか?」
「そうそう、よく覚えてるわね。流石接客業」
私は数年前にその『信頼してる人』と会ったことがあります。彼女に紹介されたからです
このAという人物は保険の営業マン。気弱な顔をした真面目そうな30歳前後の男
椎名さんはAを『実直で凄く良い人だからヤマグチさんも保険について相談してみれば』と紹介してくれました
彼女の様子からAのことを相当信頼している様子がうかがえました。異性としてというよりも彼の人間性を高く評価しているようでした
Aはとある保険の代理店に所属していました。それとは別に個人でもいくつかの金融商品を扱っているという話でした。
もうその時点できな臭い
話してみたけどあまり仕事ができるタイプとは思えません
しかし保険なんて同じ商品であれば誰から買っても同じです。だからこそ椎名さんが『良い人、面倒見の良い人』から買いたくなる気持ちはわかります
ところが私がAと話してみて感じた印象は椎名さんとは逆だったのです
その時に知ったのですが椎名さんはこの男の紹介ですでに外国の金融商品を買っていました。それはとある国の大手銀行の関連会社が運営する投資案件で元本が保証されてる上に極めて高いリターンを得られるというもの
「この大手銀行は〇〇とか〇〇といった日本の大企業とも取引しています。金融庁に認められた大手銀行の関連会社が怪しい金融商品を取り扱うわけはないので大変信頼できますよ!」
熱弁をふるうA
詳しい説明は省きますけど要するに新興国の通貨売買で利益を狙う極めて投機性の高い商品です。元本保証を謳う時点でかなり胡散臭いと言えるでしょう
商品を販売してるのは大手銀行でなくあくまで関連会社です。それもどこまで本当かわからんけど
昔から怪しい商品ほど『金融庁』などのお堅い組織を根拠に押し出すのはド定番
この手の商品は勧誘に成功すると数万円の報酬がつくのでAはそれを目当てに営業しているのでしょう
椎名さんは一般的な投資信託を購入したような感覚でいるようですが全然違う
彼女は少し話せば誰でもわかるくらいにこの手の話に疎い人です。話が少し複雑になると「あーもう面倒臭い!」となっちゃうタイプ
それに当時の椎名さんはエステ経営が行き詰っていてこういう投資に資金を回せるほどの余裕はありません
そんな人間にこんなハイリスク商品を売る奴が『良い人』なわけがない
「椎名さん、この金融商品はちょっとヤバイですよ。これを平気で売っちゃう人はあまり信用しない方が……」
私はAと別れた後に言いました。この商品のどこにリスクが潜んでいるのかコンコンと説明しました。しかし彼女がすでに貯金の半分以上を突っ込んでると知り眩暈がしました
とりあえず説得を試みたけど椎名さんはよくわかってないようで、それどころか私がAを否定するようなことを言ったので顔が強張ってました
気分を害したようです
私にはAが真面目系クズにしか見えんけど椎名さんにとっては魅力がある人物なのでしょう
少しお節介が過ぎたようです
私は話題を切り上げ、それ以降Aの話はしないようにしました
後にその金融商品は募集を停止しました。どういう理屈かわかりませんが資金は半分も戻ってこなかったのです
それから数年経ち現在にいたるのですけど、いまだに椎名さんはAを信頼できる良い人物だと言ってます。
彼女はあの男に紹介された商品で大損した挙句、金融詐欺に少なくとも二回遭ってるのですが、悪いのは詐欺った人物でありAは被害者である、という認識なのです
「Aさん可哀そう」
って感じ。思わず喉元まで『ドアホ!』と突っ込みの言葉が出そうになったけどぐっとこらえる
口に出せばろくでもない結果になるのは明らか
冷たいけど放っておくしかない
確かにAが詐欺師とグルだった証拠はありません。知らずに片棒を担いでいただけの可能性もある。あまり賢そうな感じはしなかったし
しかし私に言わせればそんな事はどちらでもいいのです
無自覚であれ、少し調べればヤバいとわかる金融商品を椎名さんに複数回販売している事実。彼女が損失を出しているにも関わらず、です。おまけに子供でも見分けがつくような雑な儲け話を語る詐欺師を紹介した
『良い人』の定義は個人によって違いはあるかもしれんけどAが信用に足る人物ではないのは明らかでしょう
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騙されやすい人の特徴
私は昔債権を回収するバイトをしていたのですよ。借金まみれの人を沢山会いました。
様々な人がいました
ホスト狂いが多かったけど、普通の主婦もいれば会社員も
騙されて借金を背負った人もわんさか
思い出してみれば椎名さんのように地獄に片足突っ込んでるような騙され方をしてる人にはいくつかの共通点があるような気がする。特に女性は
思いつく限り列挙してみます
あくまで私が知ってる人の共通点です。主観が混じりまくってます
自分の性格や気質を語りがち
椎名さんはよく自分のことを「ポジティブ」と表現するのですが、借金メイカーはこういう『私は~な人間』という話をよく口にしてました
あれはなんでしょうね。女心がわからない自分には謎です。自分の取り扱い方法を説明しているようにも感じました。理解して欲しいのかな
なんとなく孤独な印象を受けましたが
彼女たちは友人知人が少ないです。家族と不仲な人も多かった。そのせいかわからないけど客観的な視点が少々欠けているように見受けられました。それが騙された後に傷口を広げる結果になったのかもしれない
占い好き
もうこれは鉄板です。自身の未来、性格や気質まで占い師の指摘をガチで信じてる節がありました。人の性格なんてその時の気分でころころ変わると思うのですがそういうあいまいなものを明確にしたがってるように感じました
あるいは占い師経由で怪しげなビジネスを紹介されてさらにその場で別のインチキビジネスを紹介されてつい手を出してしまい借金まみれのパターンも
自己啓発本好き
占い好きに通じますが、自己分析が好きな人が多いです
不思議なことにこういう人たちは純文学とか大衆小説、あるいはハリウッド映画のような娯楽に興味がないのも共通してます
誰も俺に好意を抱いてくれない……
だいたい借金女子は約束破るし、よく嘘をつくけどそれでも親切に接してたのによー、けっ
椎名さんなんて彼女がお金に困ってる時に行政の小口融資の上手な活用方法を教えてあげたり人を紹介したりしたのにいつまでも草食系ペテン師を『良い人』だなんてひどい
こっちはお金を請求したことなんて一度もないっつーの
どう考えても俺の方が良い人じゃんかよ(憤慨)
終わり